《めてみみ》驚かれてびっくり

2020/11/24 06:24 更新


 「最近はマスクの記事ばかりですね」。取材先で指摘されるように、アパレルメーカーなど本業ではない企業がマスクに取り組む動きは絶えない。アパレル製品の取材に出かけたのにマスクのネタをアピールされ、いささか力が抜けることも多かった。

 アパレルの販売不振をマスクで補って急場をしのげた。一過性の現象と捉えていたが、考え違いだったかもしれない。ある資材メーカーは、異業種からのマスク関連の引き合いが増え、「アパレルとの商売で培った営業や生産のノウハウが歓迎されて驚いた」という。

 発注主はインターネットなどで調べ、資材メーカーを探し当ててくるのだが、「依頼されたことだけに応じるのでなく、細かな仕様やコストダウンの方法を提案すると驚かれることに、こちらがビックリ」。アパレル業界では当たり前と考えていた仕事の仕方が、他業種では行われていなかった。

 これまで関わりのなかった業種と手をつなぐためには、学び直すことが欠かせない。相手の会社、業界などをよく知ってこそ、アパレルのビジネスで蓄積した強みを生かすチャンスが生まれる。「アパレル業界には優れている点が確かにある」。資材メーカーの経営者は熱く語る。それを広く伝える役割も求められている。マスクの先に広がる世界に、深く入っていかなければ。



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