《めてみみ》今できること

2020/10/13 06:24 更新


 定点観測で取材するセレクトショップの雰囲気が暗い。売り上げの落ち込みが続いているからだ。都心の路面店や旗艦店は豊富な品揃えと日本人から訪日外国人まで客層が幅広いのが強みだ。

 しかし今、国内客は都心での買い物を避け、訪日外国人もほとんどいない。人気ブランドの入荷日にできる開店待ちの行列も、集客のための盛大なイベントも「密」を作らないため禁じられた。

 それでも、できることがないわけではない。あるセレクトショップは、全員出社日の朝礼時に商品試着会を行うことにした。スタッフが実際に服に袖を通し、感想を述べ合う。着心地やサイズ感、定番ならディテールのどこが変更されたか。実際に着ることで得た気づきを共有する。

 来店客数が半減し、ECへの送客も当たり前になる中、スタッフのモチベーションを少しでも上げようと店長が考案した試みだ。結果的に、試着で得た実感を接客時に自分の言葉で説明できるようになり、新人からベテランまで、丁寧に接客し、売ることが出来るようになった。

 結果、客数も売り上げもコロナ前の水準に戻ってはいないが、細かく商品の説明ができるようになったことで、買い上げ率がアップし、客単価も上がったという。もどかしい日々が続く中、それでも今できることをする。その積み重ねが後々に生きてくる。



この記事に関連する記事