「良いものは長く愛用できる」とはアメカジショップの常套(じょうとう)句。「革ジャンなど数十万円と高額だとしても、長い目で見れば決して高い買い物ではない」などと店頭でも言いがちだ。しかし、「それだけしか伝えられないようでは、その顧客は5年、10年先まで次の革ジャンを買ってくれなくなる」と北関東のアメカジショップのオーナー。
では、何が必要なのだろう。オーナーは「商品のロマンを語ること」と断言する。例えば「新雪に足跡を残すように、新品の革ジャンにシワを入れられるのは購入したオーナーだけの特権。これから全てのキズにも思い出が刻まれていく」。こんな殺し文句が、単なるウンチクを超えるようだ。
流行や実用性をアピールするだけでは、コアなリピーターにはなってくれないのがアメカジの世界。ファッションとしての洋服というよりもコレクターズアイテムとして集めたくなるような、マニアックなファン心理を刺激できなければ購買頻度は高められない。
ロマンを語るためには、リアル店の役割は大きい。北関東のアメカジショップはあえて敷居を高くして不特定多数の人が入りにくい空間にしている。だが、一度はまればどっぷりつかれる仕掛けは盛りだくさん。コロナ下で社会全体がデジタル化に流れる中、リアルの希少性は逆に大きな武器にもなり得る。