19年前の今日、米同時多発テロによりニューヨークは多大な被害を受けた。世界有数の大都市はパニックに陥り、当時開催中だった02年春夏ニューヨーク・コレクションは即座に中止された。現地を訪れていたバイヤーやジャーナリストは不安にさいなまれながら足止めされ、ロンドンやミラノ、パリへの移動もままならなくなった。
思えば、それ以来の危機なのかもしれない。この同時多発テロへの怒りは、米国でのナショナリズムの機運を高め、時を経てトランプ政権を生み出すに至った。しかし、人種差別の根を断つことはできず米社会の分断は広がったままだ。コロナ禍と暴動で、ニューヨーク市民の社会生活はなかなか回復せず、多くの小売店が本格的な営業再開からは程遠い。
そんな中で9月13日からニューヨーク・コレクションが始まる。当然、参加ブランドや期間も縮小傾向にある。リアル(フィジカル)なファッションショーの開催は困難で、ニューヨーク州から厳しい制約が課せられている。とはいえ、ファッション産業が21年春夏市場に向けて再開する第一歩となる。
ニューヨークの後、ヨーロッパでも相次ぎファッションウィークが開かれる。バイヤーやジャーナリストが各国を移動する困難さは、19年前に匹敵するのだろう。それでも、できる形で前へ進むしかない。