「繁華街の人出が増えつつあるなんてニュース、ネットやテレビでよく見ますけど、そんな実感、全然ない」。売り場の定点観測で取材した専門店の店長たちが口を揃えて言う。各店とも7月の売り上げは前年実績の4~5割減だった。
長梅雨だったこともあるが、何より「単純にお客様の数が減った」。その理由は「人混みの多い街中に出るのは避けたいという人が多い」から。
渋谷のあるセレクトショップによると、7月初旬に近くの商業施設内の飲食店で感染者が確認された。ニュースが伝わると、ぱったり客足が途絶えた。その店は路面立地で同じエリアにある施設と距離も離れているのだが、月末まで来店客数が戻ることはなかった。
8月に入り、秋物も入荷しつつあるが、マニアックなファンも店に来ないため「例年なら先物買いで売れる人気ブランドのニットやアウターも全く動かない」。しかも春夏商戦をまともに戦えなかった店の多くは、EC先行で4月から値引き販売を開始。その後再開した実店舗も、なし崩し的にセールに突入し、それが今も続いている。
在庫調整の遅れから「下手をすれば今月いっぱいセールを継続することになるかも」とも聞いた。終わらぬ来店自粛に、梅雨明け直後からの酷暑。ファッション消費にはブレーキばかりでアクセルのかからない夏が続く。