東京でデザイナーブランドの21年春夏メンズやプレスプリングの展示会が行われている。自粛期間を経て、こつこつと準備を進めてきた春夏のサンプルが日の目を見ることになった。先行きが見えない中でようやく展示会までたどり着いたと、ほっと胸をなでおろす関係者も多いだろう。
予想通りとはいえ、型数を例年の8割ほどに絞って提案するブランドや定番寄りの商品を増やす傾向が見られる。今後のビジネスの状況が見通せない中では、大きなリスクは避けなければいけない。いつもより大胆な提案がない展示会は残念な気もするが、状況を考えれば致し方ないところもある。
仕入れる側の考え方もブランド側と共通する。再度の営業自粛要請の可能性も踏まえ、販売期間を長くとれる中軽衣料の比率を増やすという考え方のバイヤーがいた。実店舗での販売リスクを避け、ECとの親和性のあるデザインを求める声も聞いた。この1年はそんなにリスクは張れないということだろう。
ただし、無難な商品ばかりでは、客が心ときめく売り場にはならないのも事実。人々に夢を与えるというファッションの側面は、コロナ禍であっても必要だ。ファッションはいつの時代でも、ビジネスとファンタジーのバランスで成り立っている。この1年も、いかにそのバランスを取れるかが問われる。