《めてみみ》会えないストレス

2020/06/24 06:24 更新


 北海道に住む学生時代の友人から急に連絡があった。大阪に来ているので会いたいとのこと。終日予定があり、難しそうだと答えると、何とか時間を取ってくれないかという。結局、河原町近くの喫茶店で1時間だけ会うことになった。

 電話の声で、少し予感したのだが、友人は大病を患い一時退院したばかりだった。医師の許可をもらいながら、思い出の場所や旧友を訪ね歩いている。掛ける言葉が見つからず、もっぱら聞き役に回った。

 年齢を重ねると、親の世代はもちろんのこと友人やビジネスでお世話になった人の病気や訃報に接することが増える。少し前に会ったと思っていたのに、10年もご無沙汰していることに愕然(がくぜん)とすることも。反省しつつ、その後しばらくは、努めて旧友や知人に連絡を取るようにした。その最中に新型コロナウイルス感染拡大による移動の自粛。会うべき人のリストが中断した。

 この数カ月、様々な取材先で「早くあの人に会いたい、あの会社に新商品を見て欲しい」との声を数多く聞いた。やはりウェブでは心が通じにくいか。ようやく、都道府県をまたぐ移動が全国で緩和された。北海道の友人からもメールが入り「予後良好。いつでも来て下さい」とのこと。新しい業界の姿は不透明。ただ、「会えないストレス」が緩和されていくことはうれしい。



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