《めてみみ》必然の翻意

2020/06/23 06:24 更新


 6月19日、朝から雨が降り続く中、都内のユニクロの店の前に長蛇の列ができた。オンラインストアには午後1時半に完売を知らせる「おわび」が告知された。機能性肌着「エアリズム」の素材を使ったマスクの初回投入分は、あっという間に売り切れた。

 4月上旬の上期決算の場でファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、自社でマスクを作って売ることはないとの考えを示していた。その後一転してマスクを売ることにしたのだが、これは同社にとっては必然の翻意と言える。

 どれほど感染抑制効果があるかはさておき、常時着用がある種のマナーとして定着した以上、「ライフウェア=究極の普段着」を掲げるユニクロとしては普段着としてのマスクを作らないわけにはいかないからだ。

 SNSでは発売初日に何とか購入にこぎつけた人の感想がすでに出ている。着用感については賛否があるようだが、客の声を聞いて毎シーズン、フリースやダウンが改良されるように、マスクもいずれ、もっと使いやすいものになるはずだ。

 当面は店頭でもECでもなかなか買えないかもしれないが、ユニクロは今後、3枚入りパックを毎週50万個生産するという。遠からず、欲しい人にはゆきわたるわけで、長らく続いた品薄や価格高騰、異業種の参入もおそらくこれで終息するだろう。



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