「どこでもドア」を手に入れた感覚だった。リモートワーク初日の感想だ。往復2時間の通勤時間が消えた。朝、妻と子供に「行ってきます」と言って2階に上がり、昼食を一緒に食べ、夕方2階から「ただいま」と降りてくる。仕事面で様々なマイナスはあるが、諦めていた「平日に家族とゆっくり過ごす」がやりようによって可能とわかり、選択肢が増えた。
世界中で多くの方が亡くなり続け、軽症でも「死を覚悟した」というほどのこの悲惨なウイルスは世界、ビジネス環境を一変させた。まだ序の口でこれからもっと大きく変わる。
今、取材はウェブ会議システムで行う。もちろん実際に会う方がいいに決まっているが、これがニュースタンダード。選択肢が増えたことで今後、国内外を問わず距離の壁が崩れる。
以前、香港アパレルを取材した時、デザイナーやMDが顧客とウェブ会議で商談していた。「経費削減で海外顧客が香港に来る回数が大きく減った。でもヒット率は高まっている」。ウェブ会議システムを活用し、それまで以上に意思疎通を深めた結果という。
ツールはすでにある。要はその可能性、必要性を感じていなかっただけだ。まずはコロナ禍を何としてでも乗り越える。少し落ち着いた時、元に戻るか、苦しさを糧に進化につなげるか、ここを転換点に大きな差がつく。