《めてみみ》チャパティ

2020/05/11 06:24 更新


 チャパティを作ろうと思い立ち、スーパーに出かけたら、材料の全粒粉が売り切れ。3軒目でようやく、ちょっと高めの小袋が買えた。外出できない連休を楽しもうとパンを作る家庭が増えたようで、以前なら簡単に手に入った全粒粉が売り場から消えた。

 今や至る所で目にするインドカレーレストランでは小麦粉を大きく成形して焼いたナンが人気だが、インドやバングラデシュで日常的に供されているのはチャパティだ。小麦の殻や胚芽もひくので、焼き上がったチャパティは黒っぽいが粉の風味を感じられ、カレーの味も現地に近づく気がする。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、バングラデシュでは3月下旬から縫製や紡績の工場が操業を停止し、数回にわたり措置が延長され、5月5日までと発表されていた。しかしそれに先立ち4月26日から再開の動きが目立つ。長期に及ぶ操業停止は工場経営に深刻な影響を与えるだけでなく、繊維労働者の生活をも直撃しているからだ。「仕事がなくて飢え死にするか、コロナ感染で死ぬかだ」という、うめきが上がる。

 日本向けを扱ういくつかの縫製工場では稼働率が60~80%に戻っている。既に仕掛かっている発注をキャンセルされたという情報もある。契約の道理のない不履行は、繊維労働者からチャパティを奪うことになる。



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