新型コロナウイルスの脅威にさらされながらも、20～21年秋冬デザイナーコレクションはパリまでの日程を終えた。ミラノでは「ジョルジオ・アルマーニ」が無観客でショーを開催、最終日のショーは全て中止。パリでもいくつかのブランドがショーを中止した。
ニューヨーク・コレクションの頃は、ウイルスの広がりはまだ遠い中国での出来事だった。しかし、ミラノを終えた時期では展示会のために市内に入ることもできなくなった。パリでは展示会のオーダーをしないまま、帰国の途につくバイヤーもいた。発注は日本からラインシートをもとに行うと聞いた。
ほとんどの百貨店はバイヤーの海外出張を早々と自粛した。専門店では、パリについた途端に帰国命令を受けたバイヤーもいる。企業として社員の健康を守る責任があるのもわかる。しかし、この秋冬のファッションビジネスをどう構築していくのかを考えると、不安にもなる。もちろん、経済への影響は避けられないが、気持ちまでが萎縮してしまうのが怖い。「ショーを見て、写真をアップしている場合か」と、ファッション産業に携わる企業でさえバイヤーを叱責（しっせき）した例も耳にした。
ファッションは人の心を豊かにする力を持っている。おそらく長期にわたるウイルスとの闘いの中で、ファッションの力が必要となる。
