昨年の繊維品の輸出額は77億ドル超(日本繊維輸出組合調べ)で18年と比べて1%減った。18年は7年ぶりに前年実績を上回り底を打ったかに見え、19年2月には日本とEU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)が発効、大きな伸びが期待された。しかし、そうはならなかった。
EU向けは3%増。英国や独へは伸びたが伊は前年並み、仏は1%減だった。欧州市場の低迷が響き、関税撤廃のメリットを商機につなげられていない。
近年欧州の高級ブランドなどが生地調達を早めているため、素材展を前倒しする動きが出てきた。伊ミラノウニカ(MU)は17年に秋冬展を2カ月早めて7月に移行。仏プルミエール・ヴィジョン(PV)は来年から従来の9月展を7月に移し、21年はMUと春夏、秋冬展ともに会期が重なる。両展に出ている企業は展示会を絞るか、チームを分けて両方出るかなど戦略が分かれてくる。
展示会のバッティングは今2月にも起きた。MUと独ムニック・ファブリック・スタートが重なり、両展に出た企業は「バイヤーが分散したのと新型コロナウイルスの影響もあり来場が少なかった」と嘆いていた。
スケジュール問題だけでなく、展示会後のフォロー体制が十分でないと販売は伸びない。着実に市場を広げるにはどんな施策が必要か。成長に向けた戦略を再考する機会だ。