20年春夏デザイナーコレクションでの話題の一つに、「ドリス・ヴァン・ノッテン」のショーへのクリスチャン・ラクロワの登場があった。春夏のドリス・ヴァン・ノッテンのコレクションは、ラクロワがドリスのデザインチームに参加して作り上げた。一線を退いていたラクロワにドリスが声をかけて共同作業が始まった。
「最近のファッションで失われかけていたものを取り戻すこと。ドレスアップする喜び、ファッションを楽しむこと」。ドリスのコレクションの根底にはそんな考えがあったという。「近頃ファッションは商業にフォーカスしすぎる傾向にある」とドリス。ラクロワとの仕事は、純粋にファッションを楽しんで服作りに集中できたとか。
ファッションはビジネスではあるのだが、デザイナーブランドの場合、デザイナーのクリエイションが根幹にあって成り立つ。しかし最近、ビジネスとしての側面が強まりすぎてはいないか。そう考えるのは記者だけではなかったようだ。
80~90年代のように純粋なクリエイションが失われつつある。そんな危惧を感じる。何兆円もの売り上げを誇る巨大なファッションブランドのビジネスが、デザイナーの自由なクリエイションを窮屈にしている。新しい美しさに挑む志と、それを商業として成り立たせるバランス感が問われている。