「すてきな絵を描く画家がいる。でも絵画を見てもらうハードルは高い。キャンバス以外でその素晴らしさを表現できたら」と、あるレディスブランドがアーティストと協業した服を作ったところ、よく売れた。単にTシャツにプリントするだけでは、よくあるプリントTシャツと差異化できない。絵の雰囲気に合うTシャツをわざわざ作ったり、売れ筋のシャツにプリントするなど工夫した。
欧米の高級ブランドへの生地販売が好調な専門商社の幹部は「もっと入り込むにはテキスタイルの圧倒的なクリエイションが必要」と話す。テキスタイルデザイナーの育成に加え「この人と組めば、これくらいの売り上げは見込める」ほど力のあるテキスタイルデザイナーとの協業をイメージする。日本人でそうした力を持つテキスタイルデザイナーは限られるという。
別の商社では、以前はテキスタイルデザイナーが数十人おり、専門部署もあったが、その部署はなくなり、出身のデザイナーも一人のみになってしまった。
アパレルでの差異化には様々な切り口がある。原料や機能性も大事だ。そこにテキスタイルデザインを生かす切り口がもっとあって良い。企業で働くことだけがデザイナーの生きる道ではない。自分の力と生産背景を武器に〝稼ぐテキスタイルデザイナー〟よ、もっと出てこい。