京都新聞出版センターによる『京の名脇役』という本がある。京の暮らしや伝統工芸を陰で支えてきたモノや人に光を当てた本だ。冒頭に取り上げられているのがマネキンだ。日本のマネキンの祖は、京都の島津製作所創業者の長男、島津良蔵。現在の七彩、吉忠マネキン、ヤマトマネキンの祖をたどればいずれも島津マネキンに行きつく。
マネキンの誕生は19世紀半ばのパリ。以前はボディーに洋服を着せていたらしいが、これでは人間味が無いと、商人たちがろう人形を模してリアルマネキンを作ったと言われる。同著によると、日本語に訳す時、仏語の発音の「マヌカン」では、お客やお金を「招かん」に通じるため、縁起をかついで英語読みの「招金」としたとの説がある。
8日から、七彩の本社ビルで「装苑賞をまとうマネキンたち」と題した企画展が開かれる。同賞が輩出した著名デザイナーの作品群を、同時代のマネキンで紹介するものだ。57年の第1回装苑賞から80年代までの約50点を見せ、来年2月までのロングラン展示となる。
店頭不振のなか、マネキン業界を取り巻く経営環境も厳しさを増すばかり。各社が事業のもう一つの柱とする施工関係も人手不足が深刻だ。マネキンは服や店頭を引き立てる大きな仕事を担う。ただ、いくら「名脇役」でも、まずは食わねば生きていけない。