《めてみみ》運命の岐路

2018/11/15 06:24 更新


 日本の自由貿易圏拡大戦略が花開こうとしている。米国は離脱したが、新たな環太平洋経済連携協定(TPP11)は参加国の国内手続きが進み、12月30日に発効、欧州連合とのEPA(経済連携協定)は来年2月にも発効される見込みだ。

 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は年内の「実質妥結」は厳しくなったが、中国やインドなど大国が参加するだけに実現すれば効果は大きい。TPP11は世界のGDP(国内総生産)の13%、日欧EPAは約3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。日本にとっては輸出を大きく伸ばす、またとないチャンスだ。ある商社は伸びているカナダ向けを、別の企業はオーストラリアへの生地輸出を伸ばそうと気合いが入る。

 しかし、恐れていた事態が顕在化してきた。産地の疲弊や労働者不足で「受注しても顧客が望む時期にタイムリーに供給できない」のだ。欧州に輸出する商社は「納品予定が数カ月遅れると伝えて、待ってくれる客はいない」と嘆く。

 これでは自由貿易圏が広がっても成長度合いはたかが知れている。「日本の産地で作りたいが、作れなかったりすごく時間がかかるなら海外でタイムリーに作るしかない」。世界市場を狙う企業がこう考えるのは自然な流れだ。さあ舞台は整った。本気で世界を目指すか、やめておくか。岐路でもある。



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