取材先が入居しているビルの一室を訪ねた。広くてオープンなスペースに多くの人が働いている。大半が20~30代だ。取材先は昨年創業したばかりの若い企業。こんなに人を使っているのかと驚いたが、プレートを見て納得した。「コワーキングスペース」と表示してある。
便利な一等地に事務所を借りれば家賃も高いし、敷金、礼金を積まなければならない。独立した部屋をわざわざ借りるほどの所帯でもないのなら、ここで十分だ。オフィスに必要な機能も揃っているし、ほかの若い企業から刺激も受ける。
取材した会社は海外企業の国内販売代理店として商品を輸入販売する。購入型クラウドファンディングで資金を募り、集まった資金で商品を仕入れる。仕入れ先の海外企業もクラウドファンディングで出資を募り、商品開発にこぎつけたベンチャー。販売を委ねるパートナーには、規模や実績ではなく姿勢や熱意を求めている。資金調達やオフィス環境の変化で「数年前なら踏み切れなかった」起業が身近なものになった。
日本の会社設立件数はこの数年10万件を超え、増加傾向にある。とはいうものの国際比較では下位に甘んじたまま。資金やノウハウなどの公的な支援はもちろん必要だが、手続きの煩雑さやそれにかける手間や時間が、起業の熱意に水を差していることも否めない。