先頃、京都市内のホテルでワコールホールディングスの懇親会が開かれた。恒例の会だが、塚本能交会長が31年間務めた社長職を退任した直後でもある。組織は確立し、経営方針が大きく変わるわけではないものの、一つの時代の節目を感じた人は多かったようだ。
帰路、京都駅で電車を待ちつつ想像してみた。終戦から10カ月後の6月15日、同社創業者の塚本幸一氏が復員兵としてこの駅に降り立った。中国やビルマ(現ミャンマー)で生死の境を何度もさまよった一兵卒。失意の帰国だった半面、日本の復興を誓い、「今にビルを建ててやる」と決意もしたという。
ダイエー創業者の中内功氏もフィリピンの戦場を生き抜いて帰国した1人だった。庶民の豊かさを追求し拡大路線を突き進んだダイエー。背景には、中内氏が戦場で痛感した日本と米国との圧倒的な物量の差、自らの飢餓体験が大きく影響したと聞く。こうした「執念」ともいえる無数の思いが戦後日本の繁栄を支えた。
今日は73回目の終戦記念日。あの日を20歳で迎えた人も93歳になる。実際の戦争体験を語れる人は本当に少なくなった。戦争がなければ、多くの人々の人生が大きく変わったはず。インナーや量販店の歴史、今日の業界地図も全く違うものになったろう。先人への敬意と平和のありがたさを思う日にしたい。