ある大学が産学連携で、企業と一緒に事業開発に取り組んだ。声がかかったセレクトショップでは、社員が学生たちと一緒に客を集める商売のプロジェクトを考えることになった。
セレクトショップの社員たちは最初、ファッションの商売で客を集めるために、「仕掛けるブランドをSNSで発信して狙う客層に知ってもらおう」と提案した。が、彼らよりSNSにどっぷりであるはずの学生たちは、みな首をかしげた。
聞いてみると、ビジネスで注目を得たい会社が「バズる」ことを狙ったり、フォロワー数をたくさん得ようとすることは彼らにとって、もはや日常的に目にする風景で、あえて仕掛けようと考えるまでもないことなのだそうだ。
加えて、商売を仕掛けている側が、自分の店やブランド、イベントに客を集めようと発信した内容に、仮に誰かが「いいね」を付けたとしても、それはとりあえずレスポンスしておくだけのことであって、本当に店やイベントに足を運ぶ保証にはならないという。
結局、学生たちが出した対案は、仕掛けるブランドを売るために、リアルの店やそこで行うイベントでどれだけ客を引きつけるか、その工夫や努力に重きを置いたものだったそうだ。情報があふれ、客の眼前に突きつけられることが当たり前になると、一周回って再び中身や本質が問われる。