《めてみみ》かすかな光

2018/08/09 06:24 更新


 この夏、いくつかの地方工場を回った。国内生産見直しの掛け声は確かにあるが、消費に力強さが感じられないなか、受注先企業との商談の雰囲気は重い。何よりも長年の海外生産シフトで、海外の縫製工賃の価格が一般化してしまった。国内生産だから高いという理屈は通りにくい。

 それ以上に深刻なのが人材の確保。最新の設備を入れようと、受注が増えようとも、肝心の働く人がいなくては企業活動そのものが成り立たない。新卒採用が望みにくくなるなか、外国人技能実習生はもちろんのこと、高齢者を含めた多様な人を対象に、短時間勤務や週何日制など、柔軟な勤務形態で乗り切っているのが実情だ。

 かすかな光はあると信じる。社会が成熟化し、商品、情報があふれかえる。未曽有の天災、想像外の事故や事件も珍しくない。人間にとっての根本的な幸せとは何かが問われ始めた時代。突き詰めれば、幸せの原点である衣食住に関わる仕事への評価は高まってくるはずだ。

 新しい企画に頭を悩ますデザイナー、混んだ電車に揺られ灼熱(しゃくねつ)の都会を歩く営業担当、AI(人工知能)を使ったチャットボットでネット販売を組み立てる技術者。この産業は多種多様な人々で成り立つ。地方の工場で黙々とミシンを踏むのも重要な構成員の1人。後者の選択肢がもう少し広がっても良い。



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