《めてみみ》連鎖の街に

2018/08/02 06:23 更新


 サザンオールスターズの曲の一つ、「流れる雲を追いかけて」の歌詞に「連鎖の街にあの人と…」という一節がある。連鎖街というのは、第2次世界大戦前、中国・大連の駅前に日本人が集まり住んだ繁華街だ。父親がかつて住んでいた街を題材に、桑田佳祐が作ったと聞く。

 古い地図を見ると、銀座や心斎橋などと名付けられた通りに沿って数多くの店が並ぶ。俳優の故三船敏郎らが生まれ育った家が今も残る。セントラルヒーティングや水洗トイレが完備され、当時の日本でもなかなか見られないモダンな街だったようだ。

 この夏、10年ぶりに旧連鎖街を訪れた。高層ビルが立ち並ぶなか、時代から取り残されたような一角が広がる。1階の店舗部分を中心に、電材関連の商店、地方からの人を泊める簡易宿泊所などが営業しているが、建物は老朽化が著しい。駅前の一等地でもあり、エリア全体の再開発は時間の問題のようだ。

 歩いて数分の場所には、かつてイトキンが建てた商業施設がある。3万5000平方メートルを超える大きなものだ。その後は久光百貨店に変わり、久光もネット販売の伸びなどを背景としたリアル店舗の不振から、一昨年に閉店した。歌の別の一節、「ただ、見果てぬ夢を追えば…」というメロディーを思い浮かべながら、時代変化のすさまじいスピードを改めて感じた。



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