《めてみみ》受難の時代

2018/03/30 04:00 更新


画像はイメージです

 近ごろは、まるで玉突き人事のようにラグジュアリーブランドのアーティスティックディレクターが変わっていく。「バーバリー」のデザイナーに元「ジバンシィ」のリカルド・ティッシが就任したことで、レディスの交代劇はひと段落。今はメンズのデザイナー交代が続いている。

 「ルイ・ヴィトン」のメンズを手掛けていたキム・ジョーンズが「ディオール・オム」を担当する。そのルイ・ヴィトンのメンズは、「オフホワイト」でストリートの人気を集めるヴァージル・アブローが担うことになった。

 このメンズの交代劇を巡る2人のデザイナーには、共通点がある。それは服のデザインというよりも、コンセプトワークが得意なことだ。2人ともスタイリングの仕事をしていただけに、プロダクトの作り込みに主眼を置く仕事とは異なる手法をとる。例えば、ダブルネームやコラボレーション。2人とも、違うブランドと組んで限定商品を出すなどの話題作りにたけている。

 それは、今のブランドビジネスの一つの側面を象徴している。SNSに代表される絶え間ない話題作りやスピード感のある仕掛けが、プロダクトへのこだわりを凌駕(りょうが)する。昔ながらの服のクリエイターにとっては、受難の時代かもしれない。しかし、時間と手間をかけて作るクリエイションの力を信じたい自分もいる。



この記事に関連する記事