今年、ワコールホールディングスの海外事業で二つの出来事があった。一つは欧州会社がフランス・パリの国際ランジェリー展で「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したこと。これまで欧州の大手企業が受賞してきた賞だ。機能性ランジェリーの市場確立、人間科学研究所の知見とトレンドを融合させた商品提案などが高い評価を得た。
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同社が海外市場の開拓を本格化して半世紀近くが経つ。米国や中国では事業の存続そのものを議論する時期があった。欧州も数々の苦難を乗り越え、収益に貢献し始めたのは近年のことである。
一方、国境を超えて事業が広がるなか、予測し難い事態も起こる。今年は国際人権NGO(非政府組織)から、ミャンマーの工場における労働環境問題の指摘を受けた。80%がグループ内企業の生産であり、子会社の外注委託先の生産現場まで把握するのは、容易なことではない。
それでも同社は直ちに調査を開始し、CSR(企業の社会的責任)調達ガイドラインを公表した。さらに安原弘展ワコール社長自ら、NGOの事務局長との面談を行った。
グローバル化への対応、特に市場開拓は業界の大きなテーマ。短期的な収益にとらわれず、持続させる強い意志を持つこと、人権や環境問題など世界の潮流に対する関心を怠らないこと。来年も業界全体の大きな課題となる。