《めてみみ》蝉瀑布

2017/07/31 04:00 更新


 毎朝、クマゼミの強烈な鳴き声で起こされる。鳴き始めたのはいつもより早く、数はいつもより多い。今年の夏もどこかおかしい。秋の終わりから冬の初めに降る時雨になぞらえて、蝉(せみ)時雨という表現があるが、騒音計で測ったところ90デシベルを超えている。騒々しさは時雨というよりも瀑布のようだ。

 セミも鳴く順番があって、いつもなら6月ごろにニイニイゼミが鳴き始め、やがてアブラゼミ、そして一番暑いときにクマゼミが鳴き、夏の終わりを感じるころにツクツクボウシが鳴くようになる。時期によってセミが入れ替わり、聞こえてくるセミの声も替わっていく。夏物のMDのように初夏、盛夏、晩夏と主役は変化するのだが、今年は立ち上がりから盛夏物を全面展開してしまったようだ。いきなり大量のクマゼミが現れた。

 気象庁の3カ月予報によると、全国的に8~10月の気温は平年よりも高め。8月の暑さは厳しく、9月になっても残暑が続く。今年の夏は長そうだ。まだ長い夏の入り口に差し掛かったばかり。

 売り場では夏のセールが一巡した。秋物の本格的な投入にはまだ早く、商業施設を歩いても、夏物に秋色を乗せたり、人気商品のデザインを変えて新鮮さを出したり、工夫を凝らしている。消費者に何を訴え、売り場をどう演出するか。店頭の長い夏も始まったばかりだ。



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