中国の習近平国家主席は香港返還20周年の演説で、香港の中国からの独立の動きを「絶対に許さない」と強く釘を刺した。47年までは高度な自治を認める「一国二制度」の維持を約束する。一方、中国の影響力が強まる香港は、飲み込まれまいと必死に抵抗する。
だが経済面では香港と中国本土との融合は大きく進む。97年に1100万人強だった中国本土からの観光客は16年には5670万人と20年で5倍に膨らんだ。香港はここ数年低成長が続く。本土観光客の減少も一つの要因だ。本土からの客が減れば、香港の小売市場が大きなダメージを受けるくらいにまで不可欠な存在になっている。
16年には「サービス貿易協定」が結ばれ、香港企業も中国への進出を加速させている。また中国が進める「一帯一路」構想では香港への大きな投資が始まり、政治に加え経済面でも中国の影響力は増すばかりだ。
香港大学は香港の若者に対し、「自分が広義の中国人だと思うか」と尋ねる調査を続けてきた。香港が英国から返還された20年前、その比率は31%だった。直近の調査ではわずか3・1%という。香港が中国に戻り、20年が過ぎたにもかかわらず、自分は中国人と思う人々の割合が大きく落ち込んでしまう現実。取り込もうとすればするほど離れてゆく心。とても物悲しくとてもリアルだ。