【物作りへの思いややりがいは?】「オリヒカ」商品部リーダー 兼田佑美さん 店舗スタッフの声を大事に

2024/09/18 00:00 更新


「次の目標はオリヒカでレディス単独店を出店すること」だという兼田さん

 店舗の魅力や強みには、店作りや客と接するスタッフとともに、商品の魅力は欠かせない。独自性や店頭の声を大事にしながら、企画担当者は手に取りたくなる商品開発に挑み続けている。

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商品の改善続け満足度向上

 AOKIのビジカジスタイルを提案するSC向け業態「オリヒカ」は主力のビジネスウェアに加え、カジュアルとレディス分野を強化し、商業施設内で独自のポジションを確立している。企画担当者は顧客のニーズ・ウォンツを聞き出す販売員と連携し、店頭起点を徹底した商品開発でヒット商品を生み出している。商品部リーダーの兼田佑美さんが関わったレディス分野の「フラミンゴパンツ」は、オフィスカジュアルを象徴するアイテムに成長した。顧客の声をフィードバックして商品の改善を続けることで、さらなる顧客満足度の向上につながるとともに、レディス全体の売り上げをけん引する役割を果たす。

20~40代女性に支持

 オリヒカのフラミンゴパンツは22年春夏に販売を開始して以来、約2年間で1万本を突破する売れ行きとなった。はくだけで足が長くきれいに見える、美脚効果が特徴で、オリヒカの主力顧客層である20~40代の女性に支持された。同パンツは股上を深くしてタテのラインをまっすぐに見せるようにセンタープリーツを入れ、サイドの切り替え線を前側にするなど仕様の工夫による視覚効果に加え、ストレッチ素材を使用し長くはいても疲れない点が高く評価された。

 オフィスカジュアルの着こなしとしてパンツスタイルが増加する中、オリヒカではターゲットが幅広く、顧客層の体形も異なるため、どの世代がはいても美しいシルエットを目指した。さまざまな体形の人たちをカバーしながら、美脚に見せるのに苦労したという。そのため商品企画には1年半と通常よりも長くかかった。社内のいろいろな人にサンプルを試着してもらい、シルエットの微調整を重ねた。体形カバーをするには、適度なゆとり量をどうするか、どんな素材を使うかを試行錯誤した。さらに企画意図を顧客に分かりやすく伝えつつ、販売スタッフにも浸透するようなインパクトのあるネーミングが難しかったという。

2年間で1万本以上を販売したフラミンゴパンツ

数字で見えない部分

 兼田さんは「当社の商品開発の強みは65年以上スーツを作り続けてきたこと。その強みを生かすために何よりも大事にしているのは、店舗スタッフからの意見だけでなく、年間10万件以上のVOC(顧客の声)」と強調する。オリヒカでは定期的(年4回)に店舗スタッフと意見交換会を開き、「どうして売れなかったのか」など、数字で見えない部分まで共有する。VOCも毎週確認し、悪かった意見も企画に反映することで、はき心地やサイズ感、素材感などの改善につなげている。

 「商品開発で転機になったのはオリヒカの『サードスーツ』のレディス版にかかわったこと」と兼田さん。サードスーツはメンズで15年からスタートし、ウールのカチっとしたスーツが主流の時代にビジカジスタイルを提案した。そのレディスは18年からスタート。当時、レディスでのビジカジの定義が難しく、最初の2型を企画するのに全国の店舗スタッフ会議の場を訪れ、ヒアリングを続けた。「店舗の女性スタッフが着たくなるサードスーツを作りたい」との思いが通じ、初回から好評だった。これによってオリヒカの客層が広がり、現在ではアイテムも拡大し、全商品の約半分をサードスーツが占めている。

 兼田さんは高校生の頃から「服作りがしたい。バイヤーになりたい」と強く思い続け、今、夢がかなって商品開発を担っている。そのために、大学時代にはアパレルショップでアルバイトを経験し、AOKI入社後に繊維製品品質管理士の資格も取得するなど常に努力をしてきた。次の目標は「オリヒカでレディス単独店を出店すること」だという。兼田さんは目標実現に向け、新たな商品開発にチャレンジし続ける。

(繊研新聞本紙24年9月18日付)

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