24~25年秋冬パリ・メンズファッションウィーク中に開かれたショールームでは、ボンデージのエッセンスを加えた大人のモダンエロチックが目立った。クラフトタッチや、パーソナルなストーリーによる温かなムードも新鮮だ。
(ライター・益井祐)
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各所でボンデージ⁈
「クレージュ」のメンズの秋冬とレディスのプレフォールは、ちょっぴりセクシュアルな気分が漂う。パンツやスカートのお股やお尻に意味深なポケット。レザーのスリーブレストップやウールのパンツは、バックルでつないだサイドからお肌がチラ見え。セーターやプリントTシャツの胸には縦にジップアップが走り、気分で開閉できる。透け感のあるPVC(ポリ塩化ビニル)や細身のボンデージパンツなど、着想源の一つとなったBDSM(人間の性的な嗜好(しこう)の中で嗜虐的性向をひとまとめにした言葉)がわかりやすいデザインも。
ステファノ・ピラーティによる「ランダム・アイデンティティ」にもドイツらしいセクシュアルなアイテムがあった。ボンデージマスク型やアイマスクを着けている顔のようなバッグ。背中のスポーティーなアジャスターでウエストを絞ることができるオーバーサイズジャケットなど、コレクションはテーラーリングの美しさが目を引く。
ランダム・アイデンティティも紹介するドーバーストリートマーケットのパリショールームには、他にも注目ブランドが並んだ。
「ERL」の撮り下ろし動画は、高校生の生活を追ったティーン映画のようなストーリー。アメフトや演劇に勤しむ姿に始まり、プロムナード、そして衝撃的な最後を迎える。チノパンやカーゴパンツにニットのフーディー、プロムスーツはERLらしいゼブラ柄。どことなく90年代の香りがする。
パーソナルな物語
スケーターブランド「ラスベート」には、テーラードのアウターが登場。比翼仕立てのコートはフーディーを着てももたつかない形に仕上げている。ウールのパーカは中をワッフル状の素材にして着心地と保温性を高めた。これまでも作っていたが卸していなかったスケートボードが初めてショールームに並んだ。仲間たち一人ひとりが持ち寄った写真のコラージュに、手書きのコメントを添えて、亡くなった友人や旅好きだった祖父母に捧げるパーソナルなストーリーが並んだ。