【パリ=松井孝予通信員】仏LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループは9月9日、米ティファニー&カンパニーの買収を断念すると発表した。米国による仏製品への追加関税問題を理由に、仏ヨーロッパ・外務省からこの買収を断念するよう要請があったという。
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仏政府は米大手テクノロジー企業を対象にしたデジタル税の導入を決定。米政府はその報復として来年1月6日から仏製品、特に高級品への追加関税発動を示し、両国間の緊張が高まっている。
LVMHは投資の現状を検討するため取締役会を開き、買収の完了予定日を8月24日から11月24日に延期していたが、ティファニーは12月31日に再延期するよう要請、仏政府からは来年1月6日以降に先送りするよう通達があった。これにより、LVMHは11月に買収を完了できないとし、計画を断念した。
LVMHのジャンジャック・ギオニーCFO(最高財務責任者)は仏メディアに対し、「驚愕した」と仏政府からの書簡についてコメントした。同買収については慎重を期し、政府要人や法律家に助言を求めていたという。仏ヨーロッパ・外務省のスポークスマンは、ルドリアン外相が今後の両社間の問題に取り組むと話した。
LVMHは昨年11月、ラグジュアリーセクター過去最大規模の総額162億ドルでティファニーを買収すると発表。今年6月にはティファニー株を公開市場で購入ないことを決定したことから、コロナ禍を背景に買収総額を引き下げるための手段ではないかとささやかれていた。このうわさについてギオニーCFOは、一切を否定していた。
ティファニー側は、買収契約の順守と独占禁止法の認可取得の違反で、LVMHを米裁判所に提訴した。米仏貿易摩擦に端を発する大型買収断念は今後、裁判へと場所を移す。