【ロンドン・ファッションウィーク・セプテンバー2020】それぞれの「脱ロックダウン」

2020/09/25 11:00 更新


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 デジタルとフィジカル(リアル)が並行して行われるハイブリッド形式の21年春夏ロンドン・コレクションは、数的には圧倒的にデジタルが優勢だが、終了して見るとやはり主役はリアルだった。モデルを使ったショーやプレゼンはごく一部だが、趣向を凝らした展示会でコレクションの世界観をアピールすることに成功したブランドもあり、模索状態が続く現在の社会状況下での発表に新しい可能性を垣間見ることもできた。生命感あるものに触れたいという人々の意識を反映してか、自然の中でのショーが目立ったが、ロンドンからはるか北西に位置するバッキンガムシャーの丘陵地帯の農場で、観客を招いてのダイナミックなリアルショーを行ったパリア・フォーザネは今回のトピックとなった。全体的には、癒やされるような優しさを誘うノスタルジックなフェミニニティーやハッピーな気分を盛り上げるポップなカラーパレット、着るアート、リネンやコットンの清涼感を生かしたクリーンなスタイルが台頭している。

(ロンドン=若月美奈通信員)

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 モリー・ゴダードは、ロックダウンがあけてショーをするならそぎ落としたデザインを見せたいと、モノトーンのドレスを作り始めた。ところがアトリエに戻ってみると、それまでの暗い日々の反動からか、鮮やかな色をどんどん取り入れたくなったという。

 そうして出来上がった新作は、チュールのふんわりドレスやティアードスカート、シャーリングを施したギンガムのスカート、ボーダーニット。これらのシグネチャーをベースに、太いリボンで編んだクロシェのトップや同じテクニックのハンドバッグ、「アグ」とのコラボレーションによる厚底のミュールで変化をつけたピースフルなデザインが揃った。

 「ロックダウンがなかったら、同じコレクションになっていたかどうかはわからない。ただ、本当に自分に正直な新作が出来上がった」とゴダード。複数ある着想源には、雑誌「フルーツ」やカムデンのストリートも含まれ、コンパクトなニットパーカやチュールのアンダースカートをのぞかせるアノラックドレスなどスポーティーな隠し味もある。

 新作発表はまず、アトリエでの無観客ショーの録画とルックブック用の写真撮影からスタート。翌日、その部屋は人台に新作を着せ、壁に写真を並べたギャラリーのような展示会場となり、20分ごとにジャーナリストを1人ずつ招いてデザイナー自らが案内した。その後、夕方にショー映像が公開という形のハイブリッド形式をとった。

モリー・ゴダード(写真=Ben Broomfield)

 クリストファー・ケインは「ずっと家にこもっていたが、庭があることが救いだった」とロックダウン中を振り返る。そこで、庭で絵を描きはじめた。アクリル絵の具を山盛りにし、のりを指でなで付けグリッターをのせた家族や友人たちの肖像画や抽象画は100枚以上に及ぶ。その絵画をプリント柄にしたり、服そのものにハンドペイントしたり、プリントの上にペイントを重ねたコレクションが出来上がった。

 映像ではその制作工程を紹介し、新作は絵画と服を展示したプレゼンテーションで披露した。ウエスト切り替えのスカートがふんわり広がるワンピースやステンカラーのコートやジャケットなど形はあくまでシンプルに、ダッチサテンなど質感のある生地に迫力の絵画がのる。その他、全面にクリスタルをはりつめた太いストライプのトップなどが加わる。型数を絞ったエクスクルーシブなコレクションとなった。

クリストファー・ケイン

 シモーン・ロシャはギャラリーにモデルを配置してのプレゼンテーション。スカートがふんわり広がるボリューム感やパール使い、アクセサリーのように服の上に重ねるブラトップといったシグネチャー的なデザインを踏襲しながらも、極端ななで肩や重厚なゴールドのブロケード地、城をかたどった刺繍に巨大な卵をビーズのネットで包んだようなイブニングバッグなど、ヒストリカルなムードを漂わせる。デジタル発表は行わなかったが、終了直後にインスタグラムで全ルックを公開した。

シモーン・ロシャ(写真=Andrew Nuding)

 ベザニー・ウイリアムスは19年から支援しているホームレスになりかかっている母子を支援するチャリティー団体、マグパイプロジェクトとのコラボレーションによる新作を映像と展示で見せた。オンラインでの配信に先駆けて行われた展示会では、デザイナーとマグパイプロジェクトの代表者がサンプルを前にコラボレーションの工程を説明する。

 かすれたカラフルな飛び柄プリントが乗せられた白いコットンドレスには、子供たちが描いたイラストが所々に配置されている。ジップアップブルゾンには母が子供を抱く姿がパッチワークで描かれ、「アディダスオリジナルス」のデッドストックや古着をコラージュしたシリーズにも顔のモチーフがのる。新しいアイテムとしてはピンストライプのテーラードが加わった。ユニセックスな大人の服に加えて子供服もデビュー。コレクションの収益の20%が寄付される。

ベザニー・ウイリアムス(写真=Ruth Ossai)

 マーガレット・ハウエルはクリエイションに対するパンデミックの影響について、きっぱり「ノー」と答える。マスキュリンな定番アイテムをその時のフィーリングでアップデートしていくデザインは揺るがない。「今後も物作りのプロセスは変わるかもしれないが、美意識は変わらない」と新作を前に言い切る。

 その今のフィーリングを反映したアイテムは、レディスであればロング丈のテーラードジャケットやハイウエストのゆったりとしたタックドパンツ、メンズであれば左胸に大きめのパッチポケット、右胸に小さめのフラップ付きポケットをつけたアーカイブのデザインに、太めの折り返しをつけた半袖シャツだったりする。全体的にシャツの半袖は太めで、プラケットも太い。股上が下がったパンツなど程良いオーバーサイズ感がポイントだ。ブラウン系のコレクションに、優しいダスティーブルーを差す。「バブアー」とのコラボはオイルドコットンではなく、1943年に開発された密な織りによって防水効果を出したベンタイルを使用。襟にコーデュロイを配したボタンフロントの軽めのジャケットになっている。デジタルスケジュールへの参加はなかったが、ファッションウィークサイト内の同ブランドのページでルック写真を公開した。

マーガレット・ハウエル

 ロクサンダはモダンなアパートメントの部屋に、様々な年齢や体形の女性たちが新作を着て生活する様子を演出したプレゼンテーション。キッチンの女性は背中が大きく開いたパネル切り替えのワンピース姿で包丁を持ち、食卓を囲む女性はカラフルなひもを垂らした鮮やかなピンクのリラックスドレスを着ている。服やお菓子が散らかったベッドの上にはトラックスーツのような姿の母と娘が寝そべる。

 もっともそんな寝間着のようなスタイルもウールカシミヤ製で、袖が広がるリブニットになっていたり、ピンクやグリーンのカラーブロックになり、いかにもロクサンダらしい。ロックダウンを経て生まれた快適で優雅、かつハッピーなコレクションは、これまでのデッドストックを新しいシルエットでアップサイクルした新作も含まれている。

ロクサンダ

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