ロンドンでアズディン・アライアの展覧会が開幕

2018/05/23 10:59 更新


 「アズディン・アライア~ザ・クチュリエ」展がロンドンのデザインミュージアムで始まった。先月末のロンドン旗艦店開店に合わせアライア自身がオランダのフローニンゲン美術館のキュレーターであるマーク・ウィルソン氏とともに準備を進めてきたロンドンで初の展覧会。旗艦店同様に本人は完成作を見ることなく他界してしまった。

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 会場に入ると、正面には柱のような極端に長いスカートに圧倒される7体のドレスが並ぶ。17年のアライアによる最後のクチュール作品である。右手には86年にグレース・ジョーンズが着たパープルのドレスを含むマーメードドレスのシリーズ、その奥にはスタッズを飾ったレザーの作品など、シンプルな四角い部屋にテーマ別に60点が展示されている。

 会場は、クリス・ラズやマーク・ニューソンなどアライアと親交の深かった5人のアーティストが、展示作品に合わせて制作したスクリーンで区切られている。大半がメタリック素材などを用いた無機的なアートスクリーンだが、一つだけ何枚ものドレスのドローイングが飾られたものがある。アライアの生涯のパートナーだった画家のクリストフ・フォン・ウェイエが描いたものだ。

 アライアといえばボディーコンシャスの先駆者として広く知られるが、英語では「キング・オブ・クリング」の異名を持つ。クリングは「くっつく、まとわりつく」の意。つまり、体にまとわりつくようなボディーラインを強調したドレス。バストからウエストをなでるようにカバーして美しくスカートが広がる彫刻のようなダイナミックなシルエットが見どころだ。

 得意とするレザーやレースに加え、薄く透ける布地でシャープなラインを描く。豪華な装飾で飾り立てるドレスとは一線を画した、布地との対話と絶妙なテクニックで生み出す作品に、クチュリエの仕事の神髄を見る。

 生涯、年齢を公表することのなかったアライアは、昨年11月に死去した時には77歳という発表の一方で、82歳という報道もあった。展覧会場には写真入りの年表があり、そこには1935年生まれ(つまり82歳没)と記されている。10月7日まで開催。

(ロンドン=若月美奈通信員)




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