靴製造のリフト 雪駄の良さ生かし健康を支える靴を開発

2023/04/04 06:28 更新


歴代「サン駄」と第5弾の「セッタエアー」搭載モデル(左端)

 東京・浅草の靴製メーカー、リフトが自社ブランド「シーソー」の販売を伸ばしている。雪駄を元にしたサンダルのほか、その構造を取り入れたスニーカーも開発した。日本伝統の履物に備わる〝健康〟に着目して新たな需要を開拓する。

 「革靴のメーカーとして、既存のスニーカーと勝負できる新しい靴作りをしていきたい」と話すのは藤木修一社長。00年に紳士靴メーカーとして創業、消費の変化を見据え、機転を利かせて物作りの幅を広げてきた。設備投資も惜しまず、一部の工程を除いては一貫生産での量産体制が整う。OEM(相手先ブランドによる生産)を主力としながら、徐々に完成度を高めてきたのが革製の雪駄型サンダル「サン駄」シリーズだ。

 20年春にクラウドファンディングでデビューし、コロナ下でも大きな支持を得た。「ヴィブラム」ソールを使い、長時間の歩行も疲れにくいクッションの構造、歩きやすいローリングソール、衝撃吸収性の高いシャークソールなど、改良を重ねて4モデルを商品化。見た目も、牛革を使って統一感のある配色へとモダンに進化させた。価格は税抜き約2万円で、累計の販売数は3000足を超えた。

 今春は、新たに開発したハニカム構造のミッドソールを入れた「SETTAIR」(セッタエアー、商標登録中)モデルを発売した。クッション性が向上、一般的なエアーソールよりも安定した履き心地が特徴。

 サン駄の成功をきっかけに藤木社長は、雪駄を着用して歩くことで得られる健康的な利点を掘り下げた。鼻緒を底面につなぐ「前坪」によって、親指と人差し指が分離し、つま先が動きやすくなる。足の指を使って歩くと、地面をつかむ「把持力(はじりょく)」が鍛えられる。結果、バランスの良い歩行=健康の維持につながるという。

 これらを靴に応用しようと、アッパーとインソールをつなぐ前坪を縫い付けた構造(特許出願中)をスニーカーの内部に取り入れた。取り外し可能なカップインソール(同)も開発した。アッパーにはキャンバスと牛革を使い、アウトソールは耐摩耗性や衝撃吸収性に優れたヴィブラムソール。ストローベル製法で縫い合わせ、中底を入れていないので屈曲性が高い。

 昨年10月、「nigiryu」(ニギル)シリーズとして立ち上げ、クラウドファンディングで販売し、一定の支持を得られた。税抜き価格は3万3000円。構造は、様々な靴に応用できるので、今後も新しいモデルを出す計画だ。

「ニギル」の第1弾。専門病院の協力で把持力が高まったことを検証した


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