フォーマルウェアの着こなしを基礎から学ぼう!

2019/09/07 06:28 更新


 「おしゃれは自分のため、身だしなみは相手のため」をモットーに、フォーマルウェアの認知度向上とグローバルな可能性を追求するマイモードの横山宗生代表。東京・南青山でタキシードアトリエ「ロッソネロ」を運営するとともに、日本フォーマルウェア文化普及協会を昨年春に設立し、理事長として業界の活性化に尽力する。

 その横山代表にフォーマルウェアの基礎知識から応用編の着こなしまで教えてもらった。

◆初級編◆

Q.そもそもフォーマルウェアとは。

 フォーマルな場において、相手を敬い、思いやる心の表現として着分ける衣装です。フォーマルウェアには、正礼装、準礼装、略礼装の三つのドレスコードがあります。正礼装は国際プロトコルに従った服。準礼装は日本で作られた正礼装に準じた服。略礼装は正・準礼装以外の時間にとらわれない服のことです。

 TPOで着わけることが最も重要でしょう。まず、時間帯で代わります。昼と夜のそれぞれに礼装があり、午後6時(冬は午後5時)ごろを目安に、会の終了時刻にあわせて服装を選びます。次は場の格式。会場の格、集まりの規模、行事の様式に応じてふさわしい格の服を選びましょう。最後に立場です。自分の立場が主役に近いほど、主役との関係が深いほど格の高い服を選択します。逆に一般の列席者は主役より格の高い服装をしないようにしなければいけません。

 例えば、TPOに合わせた服装とはどんなものでしょうか。①海で泳ぐなら水着②お祭りではゆかた③雪上でのスキーは防寒性・防水性に優れたスキーウェア④スポーツジムでは動きやすいトレーニングウェア⑤ハロウィーンでは仮装をして楽しむ⑥フォーマルシーンならタキシードを着るなどが一般的です。

TPOに合わせた礼装が大事

◆中級編◆

Q.男性のフォーマルウェア(洋装)にはどんなものがありますか。

 ①モーニングコート②燕尾(えんび)服③ディレクターズスーツ④タキシードの4種類があります。モーニングコートは昼の正礼装。ウエストから長い裾へと曲線的にカットされたデザインのジャケットが特徴になります。ジャケットはグレーも一般的です。

 燕尾服は夜の最上級の正礼装。白い蝶ネクタイを着用します。裾が燕(つばめ)の尾のような形をしているのが由来です。

 ディレクターズスーツは昼の準礼装で、モーニングコートのテールが短いタイプ。ジャケットは黒のノーマルなシルエットが主流で、パンツはグレーと黒のストライプが入ったものを合わせます。

 タキシードは夜の準礼装。ですが、現在では正礼装扱いになります。ジャケットは、拝絹付きのショールカラーかピークトラペルで、色は黒が基本です。招待状に「ブラックタイ」と指定がある際には必ずタキシードを着用します。

 略礼服は日本独自のフォーマルウェアです。第2次世界大戦後にフォーマルメーカーが羽織り・袴(はかま)に代わる礼服として、黒のダブルブレストのスーツを商品化したのが始まりです。戦後の窮状に合わせ、未来のために考案された略礼服は半世紀以上の経った今、意義を果たしたのではないでしょうか。

夜の最上級の正礼装である燕尾服

◆上級編◆

Q.タキシードの普段使いでの着こなし。これからのグローバルスタンダードな礼服とは。

 タキシードでの着回しを覚えることが有効です。同じタキシードでも従来のウィングカラーシャツにカマーバンド姿からインナーやパンツを変えることで、結婚式の新郎からカジュアルシーンまで多様なスタイリングが可能となります。

 最近は結婚式でも新郎がブライダルタキシードからフォーマルタキシードを着るようになり、レンタルでなく、購入する人が増えてきています。フォーマルなパーティーや結婚式の列席にも対応できます。黒のタートルネックセーターやノータイのシャツを合わせれば格式の高いレストランでも様になります。

 タキシードジャケットにカジュアルなシャツとジーンズの組み合わせで上品なカジュアルスタイルを表現できます。Tシャツなどで着崩すことも可能です。

 日本の略礼服はグローバルスタンダードではありません。元号が「令和」に変わり、2020年には東京でオリンピックが開催されます。グローバル時代を視野に入れて礼服をバージョンアップする転機でもあります。クールビズの定着により、夏のオフィススタイルも多様化が進みました。一部で行き過ぎたカジュアル化によってドレスコードが乱れています。そうした反動からフォーマルウェアでドレスアップすることがおしゃれになってきました。日本人も欧米人のように人生を楽しむ生き方をするようになってきており、もっとフォーマルウェアを着るようになるでしょう。

タキシードをカジュアルに着こなす

◆レディス編◆

Q.女性がフォーマルウェアを楽しむには。

 もともと女性はファッションが大好きです。夜のパーティーではイブニングドレスで華やかさやエレガントさを演出できます。海外では本来、イブニングドレスは女性らしさを表現するものなので、露出が多かったり、スリットが深かったりとセクシーなものが多くなります。

 ただ、日本では行き過ぎると好まれないので上品さを大事にしたほうがいいでしょう。初めてイブニングドレスを選ぶ場合は素材の上質さが重要になります。ぺらぺらの安っぽい素材だとせっかくのドレスアップが台無しになってしまいます。

 スタイリングのポイントとしては、ヘアスタイルはもちろん、ピアスやネックレスなどのアクセサリー、バッグなどの小物使いで、ドレスとのコーディネートを意識することが大切です。女性向けのフォーマルウェアのグローバルなルールもありますので、知っておけば人生を豊かにするツールとしてイブニングドレスを活用することができます。

 フォーマルウェアを店頭で販売する時は、お客様にファッションの楽しさを伝える最大のチャンスととらえるべきでしょう。通常の普段着を購入する時よりも、TPOなど着こなしのルールが厳格な分、フォーマルウェアの方が店頭のスタッフの話を熱心によく聞いてくれます。お客様の人生が変わる節目に立ち会うことができ、必ず感謝されるようになると思います。

華やかでエレガントなドレス

◇ ◇ ◇

新たな基準作りが急務

日本フォーマルウェア文化普及協会理事長 横山宗生さん


 一般社団法人、日本フォーマルウェア文化普及協会の横山宗生理事長にフォーマルウェアの最新事情と同協会の活動内容を聞いた。

■結婚式の流行も変化

 結婚式での流行も変化しています。新郎がタキシードをレンタルから購入するようになってきました。フィット感や高い価格設定に満足できない層が出てきたのに加え、持ち込み可能な式場が増えてきたことがあります。フォーマルパーティーはもちろん、カジュアルジャケットとして結婚式以外の場面でもタキシードが着られるようになってきたことが大きい。列席者にタキシード姿も見られるようになりました。「フォーマルウェアを着ていく場(シーン)がない」という声をよく聞きますが、企業の周年式典やホテルでの懇親会、オープニングレセプションなども認識していないだけですべてフォーマルイベントです。新年の従業員への表彰式でタキシードをプレゼントする企業もありました。

 当社、マイモードが運営するタキシードアトリエ「ロッソネロ」への要望も高まっています。1年間でホテル6、プロデュース会社1、料亭1など結婚式場との提携が増えました。オーダータキシードを勧めてくれるプランナーも増え、高級ホテルで半数以上の新郎がオーダーした事例もあります。秋から大手紳士服専門店との取り組みで、フォーマルウェアの商品開発・店舗開発・社員教育などのアドバイスも開始します。また、芸能人へのタキシードの貸し出しも年間100人を超えています。カジュアル化し過ぎている現状ではタキシードのドレスアップ感が特別な印象を与えてくれるからでしょう。ボウタイ(蝶ネクタイ)のひそかなブームも後押ししています。

■伝統産業の振興へ

 日本フォーマルウェア文化普及協会を設立した目的は、「日本では和装・洋装ともにフォーマルウェアの着用機会が激減し、日本の伝統産業・文化も危機に陥っています。昨年も100年以上続く日本を代表する老舗機屋が幕を下ろしました。着用機会減少の原因の一つがフォーマルウェアの知識と経験の不足だと考えています。当協会で、もう一度、日本にフォーマルウェアの基準を作り直し、日本と世界に広く発信し、文化を普及することによって、日本の伝統産業・文化を啓発・振興し、日本と世界の社会貢献・地域貢献を進めていきます」ということです。理事には繊維産地の老舗機屋や染色業、織元などの社長も名を連ねています。

 認知度向上に向け、私自身もユーチューブで「タキシードチャンネル」をスタートし、タキシードの基本から最近の動向までを発信しています。秋には教科書になるようなフォーマルウェアの本も出版し、検定制度もスタートする予定です。日本人はフォーマルウェアを着るのが嫌なのではなく、知識と経験がないだけなのです。だからこそ、これからグローバルスタンダードと本物志向を知るきっかけさえ作れれば、日本のフォーマルウェアの市場は大きく変わり、成長・拡大する可能性は高いと思っています。

(繊研新聞本紙19年7月29日付)



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