仏港町ル・アーヴルの夏フェス(松井孝予)

2017/08/15 17:00 更新


港町の夏フェス

UN ETE AU HAVRE / アン・エテ・オ・アーヴル

「ひと夏、ル・アーヴルで」(夏を過ぎて11月5日まで開催)


パリのサン・ラザール駅から鈍行列車(しなかい)で1時間半。

車窓から美しい風景を眺めながら、ノルマンディーの牛たちを見てはついカマンベールやポン・レヴェックなど美味しいチーズ、りんごの木を見てはついシードルの泡なんかを思い浮かべながら、のどかで美味しい気分で到着したのは、大西洋の港湾都市ル・アーヴル。

渋めの映画ファンなら聞き覚えがあるはずのこの地名。

(フィンランド人監督アキ・カリウスマキはここで、『ル・アーヴルの靴磨き / 原題 Le Havre』というフィルムを撮影し、2011年にカンヌ国際映画祭をはじめいくつかの賞を受賞。なかなか面白い作品なので、いつの日か是非ご覧ください。)


ユネスコ世界遺産

ル・アーヴルは第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦で焼尽されてしまい、「コンクリートの父」と呼ばれ後世の建築家たちに多大な影響を与えたオーギュスト・ペレ(1874ー1954)の都市計画(1945- 1954)により見事に再建された。2005年にはユネスコの世界遺産に登録され、知られざる世界的観光スポットに昇格(矛盾きわまりない表現ですが、事実です)、何か名目は忘れたが真面目な調査では仏都市住みやすさ指数第1位を獲得した。


ひと夏、ル・アーヴルで

大西洋岸でフランス第1位の港ル・アーヴルは、今年港湾都市誕生500年。

これを祝い11月5日まで、街中が美術館化した大規模なカルチャーフェスティバルが開催されている。

文化面だけでなく、このイベントのために500を越える商店が結束し40ものプロジェクトを用意し、ツーリストのためにアプリケーションや、英語・スペイン語・ドイツ語のガイドブックを制作。

そして驚きの極めつけ、洋品店、花屋、ワイン屋、パン屋、美容院もろもろ40店がそれぞれとっておきのお話を集めた『ル・アーヴルのプチロマン / Petits romans du Havre 』をフランスの老舗出版社ガリマールから上梓した。


日帰りで「ひと夏」を満喫する

さて、この盛りだくさんな「ひと夏」を、無謀?と自問しながら日帰りで満喫を試みた。

ユネスコ世界遺産に登録された街を見なくては、と市庁舎の屋上から眺めたものの。

市庁舎屋上からのパノラマ


霧が晴れず、ミラノにいるようだったので、革新的なコンクリート住宅、そしてブラジル人建築家オスカー・ニーマイヤー(1907ー2012)が設計したル・アーヴル文化センター「ル・ヴォルカン」を見に街の中心地へ向かう。

オーギュスト・ペレのコンクリート住宅
オスカー・ニーマイヤーの「ル・ヴォルカン」


輸出量でフランス第1位の港にしては、意外にのどかな海岸。日帰りじゃなくて、もう少し長くとどまりたい。

のどかな海


ル・アーヴルの勅令を色にして713の海の家を彩った Karel Martens 作 " CABANES DE PLAGE "

海の家


200キロのコンテナをアクロバットのように虹状に繋げた Vincent Ganivet 作 " CATENE DE CONTAINERS " 、などを見学した。

コンテナアート


塩田千春展/サン=ジョゼフ教会

 Eglise Saint-Joseph 

 "ACCUMULATION OF POWER "


オーギュスト・ペレによるコンクリートのテクスチャーを活かし「打ち放し」で造られた斬新で美しいサン=ジョゼフ教会では、塩田千春の壮大なインスタレーション "ACCUMULATION OF POWER "。

赤いウールの糸で高さ20メートル、幅10メートル、23個のメタル製サークル、総量1280キロ。一目で打ちのめされる。

塩田千春のインスタレーション


ピエール&ジル 『クレールーオブスキュール』

Pierre & Gilles  " Claire-Obscure "

MUSEE D'ART MODERNE ANDRE-MALRAUX (Le MuMa) 


海に臨む素晴らしい文化施設、アンドレ・マルロー近代美術館では、めちゃめちゃチャーミングなゲイのカップル、ピエール&ジル、ふたりの愛と芸術の共犯歴40年を辿るレトロスペクティブ展を開催♡

"40 Years "


写真家のピエール・コモワと画家のジル・ブランシャールは1976年の出会いから、公私ともにずーっと一緒。愛犬ジャックラッセルのトトちゃんも家族の一員。

フツーの人からマドンナ、イヴ・サンローラン、ジャンポール・ゴルティエ、オリヴィエ・ティスケンス、マーク・ジェイコブス、カトリーヌ・ドヌーヴ、ディータ・ヴォン・ティース、ニナ・ハーゲン、日本人ではサンディー、菊池桃子、新庄剛志らセレブに至迄、彼らをモデルに写真と絵とコラージュをミックスさせた、ポップでキッチュでアイコニックな1点モノのアート作品を制作してきたピエール&ジル。ここでは70年代から現在までの作品80点を一堂に展示。活動40周年のオートポートレートを海辺の美術館らしく海小屋に飾ったりしちゃって、とってもハッピーなんだから。

ピエール&ジルがいっぱい


ジルがル・アーヴル出身、ピエール&ジル創作活動40周年、ル・アーヴル500周年とおめでたづくしの展覧会とあって、二人の思い出の品々や写真など、かわいすぎて思わずウルウルしちゃう秘蔵のプライベートコレクションも。

ピエール(1950年生まれ)とジル(1953年)、いつまでも愛くるしすぎるこの二人にも会って思い出話も聞けた。日帰りで行った甲斐あり。

メルシー、ピエール&ジル! まったね~ル・アーヴル。

ジルは左、ピエールは右、真ん中はトトちゃん



松井孝予

(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。



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