レディス卸の活路⑤ 独自性に磨き 世代超え共感を得る

2019/09/23 06:27 更新


 合同展の来場者数が世界的に減少傾向にあるなど、卸型ビジネスは低迷期とされる。ライフスタイルの多様化やファッションECの成長も重なり、従来のビジネスモデルでは成功が見込めない。卸し先との共生の条件は信頼にある。卸し先は客数の増加を望む。客に足を運ばせる商品とは何か。レディス卸の模索の中に、活路が見える。

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売れ筋ではなく

 レスピーギ(大阪市)の「プライオリティ」は卸し先専門店から、ディテールなどに独自色があると評価が高い。ブランド開始は13年。当初は思わしくなかったが、専任デザイナーを起用した17~18年秋冬物を転機に好調が続き、18年度売上高も前年の20%増で初年度の3倍になった。ユーザーはスタート時は40~50代以上だったが、今では30~40代。「売れ筋ではなく、欧州コレクションを重視してトレンドを見極め、これから売れるものを提案する」(田中亮専務)姿勢が同質化を避け、展示会ごとにわくわくさせる服を出せるのが強みだ。

これから売れる服を作るという自負がある「プライオリティ」

 マザーズインダストリー(大阪市)の「ミズイロインド」は、創業以来16期連続増収の推進力。取引先での高い消化率に定評があり、新規取引が増えるだけでなく、1社当たりの取引の拡大が好調理由だ。支持が増え続けることに笹野信明社長は「スタイリッシュでリラックス感のあるノンエイジブランドとして、しっかりした物作りを続けてきたことが認められたのでは」と見る。「卸はまだ伸びしろがある」が持論。高品質は当然として、ブランディングを重ねて取引先の信頼感があれば卸は伸びると見ている。

固定観念を覆す

 ランドワーズ(東京)は「オードリーアンドジョンワッド」「リヨカ」「フレア」の3ブランドのEC事業を短期間で成長させた。これらは17年9月、ゾゾタウンに出店した。着用画像を重視し、プロのモデルやカメラマン、ヘアメイクを起用して画像の質も向上。販促にも投資してECで認知を拡大した。18年には全社売上高の3割をECが占めるようになり、19年もECの拡大で増収を目指している。ネット時代のブランディングの成功例と言える。

 ジオン商事(大阪市)が19~20年秋冬からスタートする「ユエニ」は世代を超えて共感が得やすいサステイナブル(持続可能な)の観点に立つ。広く愛されるために、ターゲット年齢を設定せず、品質に応じた価格設定のため、価格帯が広い。消費者の価値観が多様化したからこそ、この価格でなければ売れないと考えるのは、古い固定観念でしかない。〝価値>価格〟の品質本位、共感を得る物作りの背景やストーリーを携え、意識の高い消費者の購買意欲を喚起させようとしている。

(おわり/繊研新聞本紙19年8月5日付)



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