なんとしても若い市場に打って出なければ――ミセス向けで商売するメーカーの先行きに明るい材料は見えないとして、エプタモーダは17年秋、対象としてきたゾーンより若い層を狙う大人服「フィルブラン」を立ち上げた。既存ブランドの一つをなくして新ブランドに切り替え、その分の売り上げはゼロも覚悟してのスタートだった。それが今、都心商業施設のセレクトショップでも販売されている。
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買い取りのみ
フィルブランの商品は、シンプルモダンが基本。フォルムや素材で表現する行き過ぎないトレンド感、大人が納得できる品質、そこから見て〝買い〟と感じる価格が売りだ。これまでと違う市場で勝負するには商品に新しい血が必要と、有力セレクトショップで経験を積んだフリーマーチャンダイザーを招いた。パターンとディテールにこだわり、着た時に美しく、得意のコートは台場仕立てで裏地やパイピングの色柄で遊ぶ。冬物コートで3万9000円、4万9000円など、チェーン専門店とも張り合える価格にした。
取引条件も変えた。委託販売をやめ、買い取りのみで運営。これが商品の魅力作りに不可欠な条件にもなっている。フィルブランの藤田善彦事業部長は、「委託だと例えば、春先に出して夏に戻って来るかもしれないスプリングコートには手を出したくないし、作るとしてもその分のコスト込みの価格になる。買い取りにすることで、他のメーカーが避けるような商品にも挑戦できる」と話す。「そこは思い切った。条件の変更に首を横に振るところとは取引しない」

どの世代にも
セレクトショップでは、アーバンリサーチ(UR)の東急プラザ銀座や渋谷ヒカリエ・シンクスなど5店、ネミカ2店で販売されている。URではオフィスニーズが強い店舗で支持されているという。「アイテムのバランスの良さとクオリティーの高さが決め手」と、UR商品グループMDの阿部亜耶さん。価格もオリジナルとかけ離れていないため客に薦めやすく、店舗スタッフの「自店でも扱いたい」との声から5店に広がった。地方の専門店などでも、オーナーの年齢にかかわらず、商品に共感する店との取引が増えた。
これらから見えてくるのが、フィルブランのもう一つの強み、名実ともの「ノンエイジ」だ。30、40代だけでなくその上の世代も、今はデザイナーブランドもファストファッションもミックスできるおしゃれ感覚を持つ。そこに響くかどうかが商品企画の鍵となっている。
ただ、もう一歩の新規の拡大には壁も厚い。商品価格と物作りに直結する商品数量を確保したいが、営業に必要なマンパワーやブランド認知が追いつかないのが現状で、今は「ギリギリの線」。卸に並行してECを行うのも一つの方法と考えるが、まだ模索の段階だ。
(繊研新聞本紙19年8月2日付)