ミラノ随一の骨董市"ナヴィリオ"を散策(宮沢香奈)

2018/11/18 10:00 更新


4日間だけの短いミラノ滞在中にラッキーなことにNaviglio(ナヴィリオ)の骨董市に行くことが出来た。ここは毎月最終日曜日のみに開催されている人気の骨董市で、ミラノ在住のライター/コーディネーターの方からも勧められていた絶対行きたい場所の一つだった。

※前回のレポートはこちら

ナヴィリオ地区は昔ながらの街並みが残るミラノの下町で、最近では若者たちが集う新たなトレンドスポットとして注目を集めている。と聞いていたため建築や街の雰囲気も楽しみにしていたところ、”あれ??”と言った感じ。最寄駅のポルタジェノバは特に特徴のない古びた小さな駅で、周辺もこれと言って何もない。ただ、確実に素人ではない着こなしのオシャレな人が次々と現れては颯爽と歩いていく。ファッションウィークにでも紛れ込んだような違う空気が流れており、それだけでもここに来た甲斐があったと思った。

運河方面に向かいながら骨董市のメイン会場となっている川沿いを目指した。行く途中にもすでにあちこちに出店されており、実はこういったメイン通りから1本外れたところこそが穴場だったのだが、後から戻ってくれば良いとメインの川沿いへと急いでしまった。

川沿いに出るとズラリと並んだ380以上もの店舗が目の前に広がり、さらにテンションが上がる。じっくり見て回るには半日必要なほどの規模。ミラノ随一の”骨董市”というだけあって、アンティーク小物や家具、食器類、陶器類などが豊富に揃っており、洋服や靴、バッグ、アクセサリーもハイブランドのセカンドハンドやヴィンテージがとにかく多い。一般的な蚤の市によく見られる着なくなったファストブランドの古着や誰が買うの?!といったブランドの偽物なんてもってのほか、そんな物は一つも売っていない。ハイブランドでなくともトレンドを意識したデザイン性の高いヴィンテージが多く、状態も良い。骨董品の一つ一つにも上品さが漂っていた。

それだけに値段も高い。稀少なアンティークが高級品なのは当然であるし、自分の気に入ったデザインが1点物だったら嬉しい。しかし、アンティークの価値があまり分からない私のような人間には、大量生産されてそうなマグ1個25ユーロは高く感じてしまう。出店者もそういった人間や見に来ただけの観光客はすぐに分かってしまうのか、値段を聞いても笑顔一つ見せずに淡々と答えが返ってくることが多く、値引きどころか売る気もないように思えてしまった。

その反面、親切な人やフレンドリーな人は違う人種かと思うほど180度違い、その雲泥の差に度々驚かされた。そう、イタリアで一番驚いたのは”人”である。私の知っているイタリア人はみんな陽気でフレンドリーなため余計にそう思ってしまったのだろう。例えば、同じカフェであってもオーダーの時から目があった時まで常に笑顔で返してくれる(ドイツでは礼儀の一つ)スタッフと会計の際に無言で金額に指を指して”金を払え”と合図してくるスタッフがいて驚愕した。人の態度に関してはそれだけで1記事書けるほどなのでここではやめておくが、特にアジア人差別とかではなく、同じイタリア人に対しても同様である。

真逆の”雲”の方だったヴィンテージショップ『Reruns-Strascé』のスタッフ2人は、まず履いていたUNITED NUDEのブーツを褒められ、定番の”Where are you from?”から会話が弾む。川沿いに面しているため引っ切りなしに人が入ってくるにも関わらず常に笑顔を絶やさず、友人宅のように迎え入れてくれてとても居心地が良かった。同店は20年代~90年代のヨーロッパヴィンテージを取り揃えており、ドレス、レザーバッグ、パンプス、帽子と、とにかく商品数が多い。一見雑多なレイアウトに見えるが、1点1点が個性的で他ではなかなか見ないデザインも多く、バイヤーのセンスが感じられるセレクト。他にも状態もデザインも良いレザーバッグが豊富に取り揃えられており、時間に余裕があったらもっとじっくり吟味したかった。

『Reruns-Strascé』
Ripa di Porta Ticinese, 21, 20143 Milano

結局、大振りでちょっとポップなデザインのネックレスとレザーのミニバッグだけ購入し、念願の骨董市でのショッピングは終了。ナヴィリオの骨董市は一番高級らしく、ブレアや他の地区で開催されている蚤の市はアンティークに限定されておらず、もっと安価とのことなので次にミラノに来ることがあったら是非とも訪れてみたい。

ちなみに、ナヴィリオは川沿いに雰囲気の良いレストランやバーが立ち並んでおり、昼と夜では全く違う雰囲気になるとのこと。近隣には1987年創業の老舗高級セレクトショップ『ANTONIOLI』や少し行けば話題の『Armani Silos(アルマーニ博物館)』もあるため、骨董市以外でも楽しめるエリアとしてお勧めしたい。

Photo:Kana Miyazawa

(*富士フイルム”XF10”を使用。)


宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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