9年ぶりの日本の夏で風情を味わう(宮沢香奈)

2023/07/21 06:00 更新


新年に3年ぶりに一時帰国したのも束の間、闘病中だった父の容態が悪化し、5月末に再び日本に帰ってきた。残念ながらそのまま最期を迎えることになってしまったが、そばにいれたことは本当に良かったと思う。

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家族の話には詳しく触れないが、9年ぶりに日本で夏を過ごしていることに気付いた。今回は緊急帰国だったため、あまり考えていなかったけれど、2014年にベルリンへ移住してから夏には一度も帰ってきたことがなかった。湿度とじめじめした梅雨とエアコンが大嫌いで、常に体調を崩していたせいもあるが、一度ヨーロッパの夏を体験してしまうと帰りたいという気が失せてしまう。それほどまでにヨーロッパの夏は素晴らしい。(その分、冬が過酷、、、)

ニュルンベルクからベルリンへ向かう長距離列車の車窓から。

真夏でも25度から30度前後、カラッと晴れて、湿度が低いため暑くても心地が良い。家にエアコンが設置されていないのが普通のため、35度の猛暑が続くとさすがに辛いが、そうでなければ、夜は10時まで明るくて白夜のよう、夕暮れから陽が沈むまでの時間は本当に美しく、尊い瞬間を与えてくれる。汚いベルリンの街でさえキラキラと輝いて見えるのだ。

暗くなるまで外で過ごすのがベルリナーの定番。気持ち良くて時間を忘れるほど。

しかし、久しぶりに味わう日本の夏は想像していたよりずっと居心地が良い。田舎道を自転車で駆け抜けると学生時代を思い出し、エモーショナルな気分に浸ったりしている。地元の長野は比較的湿度が低く、朝晩は涼しくなるため、東京の夏よりは過ごしやすい。それに、田舎の夏は日本の風情の良さを改めて実感させてくれる。

海外暮らしが長くなってくると決まって恋しくなるのが、温泉、日本でしか食べれない日本食、家族や友人、そして、神社やお寺といった日本ならではの風情だ。ベルリンでも他のヨーロッパ都市でも文化遺産に指定されている歴史的建築や教会のような神聖な場所は多数ある。しかし、日本で生まれ育った私にとって、最も神聖だと感じる場所はやはり神社やお寺だ。

諏訪大社 下社 秋宮

地元周辺で最も有名なのは、やはり「諏訪大社 下社 秋宮」だろう。商売繁盛の御利益があると言われており、全国各地から多数の参拝者が訪れている。自分にとっても毎年欠かさず訪れていた場所であり、家族との思い出やパワースポットでもある。

下社の近隣には風情ある和菓子屋、カフェ、レストランなどが多数点在している。
地元にあるお寺の庭園の一部

9年ぶりの帰国に加えて自分の誕生日も重なり、葬儀の前に電車で30分ほどで行ける松本まで足を伸ばした。松本城を見たのは恐らく高校生以来だが、国宝ともなると外国人ツーリストが多い。私より年配の男性が流暢な英語で案内をしていたことに驚いた。

松本城
松本城へ向かう途中で発見した昭和レトロな映画館


松本市内にも歴史を感じさせる古き良き建築が多数残されており、歩いているだけでも風情を感じることができる。日本に住んでいた頃は海外にばかり目を向けていたため、国内旅行をほとんどしていないことに気付いた。どんどん変わっていく日本の街を見て回り、その土地の風情を感じることは日本人としてとても大切なことなのではないだろうか。旅好きだった父が撮った写真を見ながらそんなことを思った。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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