4月16日、17日の2日間に渡り、ベルリンのミッテ区に拠点を構えるPRエージェンシー「Press Factory」による「Press Days」が開催された。「Press Factory」は2001年設立の、ドイツでも初期のファッションPRエージェンシーの一つとして知られている。
本イベントは、2026年秋冬コレクションをプレス関係者にお披露目する目的で、今回は13ブランドが参加。日本製の高機能素材を用いたノルウェー発の「Norwegian Rain」、ギリシャの伝統的な手織り生地を用いたベルリン発の「Panos Gotsis」、老舗シューズブランド「Red Wing Heritage」、テーラリングとデニムを軸にしたデンマーク発の「Mos Mosh」、ガーナ文化から着想を得たベルリン発のファインジュエリー「INJEWELS」、イスタンブール発のデニム「Mavi」、ブラックを基調としたベルリン発「Esther Perbandt」など、多彩なブランドが集結した。

友人とともに初日に訪れたが、天候にも恵まれ、スタイリストやジャーナリスト、クリエイターなど多くのプレス関係者が来場し、会場は活気に満ち溢れていた。

中でも特に注目を集めていたのが、デザイナーの名前を冠した「Panos Gotsis」だ。ベルリン・ファッション・ウィークにも参加しており、個人的にも以前から関心があったため、最新コレクションをじっくり手に取って見てみたいと思っていた。ギリシャにルーツを持つパノス・ゴツィスが2024年に立ち上げた同名の「Panos Gotsis」は、ギリシャ・エピルス地方の職人たちと協業し、伝統的な織機によるハンドメイド生地をコレクションに採用している。また、希少価値の高いデッドストック生地や天然素材も積極的に取り入れており、サステナブルな視点とクラフツマンシップを両立させている。

仕立ての美しさをベースにしながら、柔らかく流れるようなシルエットが特徴的で、ゆったりとしたシルエットのシャツ、構築的なジャケット、ロングストールやショールなど、ジェンダーレスなデザインが印象的。特に、ディティールへのこだわりが非常に強く、袖口を折り返した際に見える異素材の裏地、芸術的な手刺繍、上品なレース使い、ジャケットの裏地へのこだわりなど、手に取ってじっくり見れば見るほど美しく、繊細な技術が多数施されている。
残念ながらオープニングには行けなかったが、2026年5月に、ビッグメゾンやラグジュアリーブランドの路面店が立ち並ぶショッピングストリート、通商クーダム(Kurfürstendamm)に初のフラッグシップストアをオープン。今、ベルリンで最も注目すべきブランドの一つと言えるだろう。

「Press Factory」と同じ敷地内にアトリエ兼ギャラリーを構えるジュエリーブランド「INJEWELS」も、以前から実際に手に取って見てみたいと思っていたブランドのひとつだ。ナイジェリア発ブランド「Orange Culture」が2026年秋冬コレクションのランウェイで全ルックに同ブランドのジュエリーを採用しており、ビビッドな赤やオレンジのルックに合わせて、シルバーやゴールドのジュエリーが揺れるたびに輝きを放っていたのが印象的だった。


伝統的な金細工の技術を用い、すべて手作業で制作されている「INJEWELS」は、18Kゴールドやプラチナ、シルバーなどのリサイクル素材を使用。また、顧客が所有する古い貴金属を新たなデザインへと生まれ変わらせるオーダーメイドサービスも展開しているという。
前述の通り、「Press Factory」はサステナブルな視点を持つブランドにフォーカスしており、ドイツ国内外の多様なブランドを取り扱っている。興味深いのは、ファッションだけにとどまらず、コスメやフードまで幅広く展開している点だ。その一例が、ロンドン発のもちアイスブランド「Little Moons」である。同イベントではデモンストレーションも行われ、チョコレートコーティングを施したり、バーナーで表面を炙ったりと、ゲストに向けてユニークなサービスが提供されていた。

フレーバーは、抹茶、マンゴー、塩キャラメル、ピスタチオ、ユズレモン、ベルギーチョコレートに加え、ヴィーガン対応のものまで揃い、非常に種類が豊富。中でも驚いたのは、日本のもちアイスと変わらないほどクオリティーが高かったことだ。これまでベルリンのアジア系スーパーでもち菓子を購入したことがあるが、味があまりにも合わず、すぐに処分してしまった経験もある。それだけに、「Little Moons」のようにサステナブルなだけでなく、味の完成度も高いもちアイスが、ベルリンの一般的なスーパーでも購入できるようになったことは嬉しい。ただし、値段は100%オーガニック&ヴィーガンのアイスクリームより高いのが懸念点でもある。
ベルリン・ファッション・ウィークに限らず、ベルリンのファッションシーンは常に変化し、成長していると感じている。特に、インディペンデントなブランドのクラフツマンシップや独創性に高い関心を持っており、今後も注目していきたい。


長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。
