「ジェニー・ファックス」は東京・新宿の中華料理店で、VR(仮想現実)ゴーグルを使って21年春夏コレクションを披露した。店はザ・チャイニーズといったしつらえの老舗。来場者は赤い円卓に座ってお茶をすすり、周りの人たちと話しながらショーを待つ。リアルショーと同じ臨場感が漂うなか、VRゴーグルをはめてショーの鑑賞が始まった。
会場は同じ中華料理店。赤を基調にしたコンパクトな店内を、カーリーヘアのドーリーなモデルが歩く。身に着けるのはフェミニンなふんわりドレス。パフスリーブのドレスにはリボンやレースが飾られ、スイートなイメージだが、極端に張り出した肩はエッジが利いている。レイヤードするのは、子供用のように小さいエプロン。極端なフォルムやディテールを組み合わせて作る、意外なバランスが目を引き付ける。透け感のある淡い色と、ファンシーなキャラクタープリントの組み合わせも楽しい。
演出はVRならではのアイデアが満載だ。店の奥から出てきたモデルは、こちらがどぎまぎするほど近い目の前でポーズを決める。ショーの最後には、モデルたちは目の前で食事を開始。ほどなくゴーグルを外すと、来場者の前にも中華まんがサーブされていた。通常ではありえない演出で楽しませてくれた。デザイナーのシュエ・ジェンファンは、「リアルショーじゃないからできることを考えて、狭い場所でショーをしたら楽しいかなと思ったんです。新しいことをやりたかった」という。
(青木規子、写真はブランド提供)