ストリートファッション・カルチャーのオンラインメディアを運営するハイプビースト(香港、ケビン・マCEO=最高経営責任者)は今春、日本法人ハイプビーストジャパン(和島昭裕社長)を設立した。日本進出を機に、世界中から情報を収集・発信できる体制をより強める。
創業者のケビン・マ氏と日本法人社長に就いた和島氏に、日本での事業計画や現在のストリートファッション人気に対する見解を聞いた。
(友森克樹)
■多角的に事業を展開
――ハイプビーストとは。
ケビン 05年に香港で設立し、現在は香港、アメリカ、ロンドン、日本の4都市に運用拠点を置き、ファッションやスニーカー、音楽、アート、デザイン、スポーツなど様々なカルチャー・ライフスタイルに関するニュースを提供しています。
ハイプビースト以外に、「HBX」というオンラインストアと実店舗(香港のザ・ランドマークに1店)や女性向けメディア、クリエイティブエージェンシーなど多角的に事業を展開しています。メディアもEC事業も好調で、前期(19年3月期)の売り上げは2ケタ増でした。
――日本法人を設立したのは。
ケビン ハイプビーストは今、世界に拠点を広げようとしています。アジアのストリートカルチャーはとても重要で、東京はそのハブという位置付け。日本語版サイトは5年ほど前からありましたが、やりきれていないこともありました。そこで、法人設立に踏み切りました。
当社のメディアには、月間数千万のページビューがあります。日本法人設立を機にさらにアクセス数を伸ばし、世界中の人々にハイプビーストを知って欲しいと思っています。
――日本での具体的な計画は。
和島 日本のファッションの解釈、審美眼がとても重要だと考えています。これまでのハイプビーストには日本の情報が足りていなかった。日本のファッション、ストリートカルチャーを世界に拡散することで、世界から日本の情報コンテンツにアクセスできるようになります。とはいえ、今や情報に国の境界線はないに等しい。世界と日本の情報、ユーザーが双方向につながっていくのが理想です。
HBXはまだ日本語対応できていないので、これから対応していきます。すでに日本ブランドを販売していますが、取り扱い数を増やしたり、日本ブランドをいち早く世界に紹介できるような立ち位置を目指します。
今後のメディアは、モノを伝える以外に、ブランドにカプセルコレクションをローンチしてもらうなどの「場所」を設ける必要があると思います。
例えば、売り場を持つのも同様で、ブランドをサポートすることが大きな仕事になっていくのではないでしょうか。香港で成功しているので、日本でも実店舗を構える可能性は否定しません。

■ソーシャルメディアの功績
――昨今のストリートファッションの人気をどう捉えている。
ケビン 私がハイプビーストを始めた当時、ストリートとラグジュアリーが交わることはほとんどなく、違う世界のものでした。転機となったのは12年。初めて紙の雑誌を出し、その時の表紙がクリス・ヴァン・アッシュだったのです。周囲からは「ストリートメディアがなぜ」と驚かれました。これが我々がラグジュアリーの情報を扱うようになったきっかけです。
今では、ヴァージル・アブローと「ルイ・ヴィトン」に代表されるように、ストリートとラグジュアリーは融合しています。これはインターネット、ソーシャルメディアの功績が大きいと考えます。化学反応が起きて新しい何かが生まれる。僕はこれこそがカルチャーだと思います。
ただ、これからは一度融合したものが、少しずつ離れていくのではないかと推測しています。完全に分断される訳ではないけれど、薄まっていくというか。今、興味があるのは、ラグジュアリーストリートから派生して細分化されたムーブメントです。
2~3年前はインスタグラムを起点に光るブランドや新たなムーブメントを探していました。けれど、今はインターネットの情報量が多すぎる。最近は、特定のコミュニティーの中でしか得られない情報や知り合いからの紹介などで得る情報に価値を感じています。
