❝彼がいなければ、 ビートルズも、クイーンも存在しなかった。❞
というコピーが強烈に心に刺さる、現在公開中のミュージック・エンターテイメント『エルヴィス』。本作監督バズ・ラーマンの言葉を借りるなら、「彼のパフォーマンスはパンクロッカーの元祖」。そして、さまざまな記録を塗り替えたレジェンド。
とはいえ、ドキュメンタリーではないのだから、「さて誰が?」と、思う方々に向けて鑑賞前の予備情報をここに。(先日開催された第75回カンヌ国際映画祭「アウトオブコンペ部門」出品作。その記者会見より)
「何度も何度もクリップを見直し、彼の動き、その声、眼差しなどを研究した。」と語るのは、3年間の役作りの成果を華々しく披露した、エルヴィス役のオースティン・バトラー。
「僕にとって大事だったのは、彼のソウルがにじみ出るようにすることだった。3年間、彼のレガシーに浸り、素晴らしい人物の人生を生きたことは、本当に心を動かされた経験だった」と付け加えられた。
さて、そのビッグイベントのレッドカーペットに登場したエルヴィスの元妻プリシラ・プレスリー。当時、コンテンポラリースタイルのアイコンとして知られたそう。
そんなファッショニスタの衣装について、美術のみならず衣装も担当するキャサリン・マーティンのコメントを、本作プレス担当者よりシェアいただいた。
「幸運にも、以前コラボレートしていたプラダとミュウミュウと再タッグを組むことができたの。プリシラのアイコニックなスタイルを活用して、有名デザイナーや彼らのデザインと結びつける方法を模索するのに最適だと思った」
なかでも彼女のお気に入りは、ディナーパーティーでまとうノースリーブの白いガウンだとか。
「レースとオーガンザとシフォンが美しく調和するミュウミュウのガウンなの。ため息がでるほど美しいドレスよ」
一方、90着以上もあった衣装のどれを着ても似合っていたという主演のオースティン。意外なデザインにリアルな発見があったと語る彼が、初体験となったアイテムの一つが、たくさんのレースがついたシャツだったそう。中でもピカ1だったのが下記。
「1950年代の全身ブルーのスーツにブルーのレースのシャツを合わせたスタイルが本当に大好きだった」
さて、究極のミュージック・エンターテイメントならではの味わいとして、絶賛配信中のオリジナル・サウンドトラック日本版CDが7月29日に発売になる。音楽にまつわる作品が目白押しのシネマ業界2022夏が開幕!
『エルヴィス』
全国ロードショー中
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
というわけで、「全身ブルーのスーツにブルーのレースのシャツ」というスタイリングも登場した注目作『エルヴィス』で開幕した7月最初の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマは「『Men in BLUE!?』へ捧ぐ」。思わず彼の主演作にも『ブルーハワイ』というタイトルの作品があったことを思いだした。そこで、少しばかりシネマにも通じる「青い旅」の寄り道をしてみたく。
「青」をイメージしたサマーバカンスの筆頭に思い出すのが、イタリア・カプリ島の「青の洞窟」。非日常を味わった「Women in BLUE」なひと時は、忘れ得ぬひと時。
そんな「青の洞窟」をテーマに掲げたドラマチックなオブジェと共に、南イタリアの味覚を楽しむ旅を、東京のベイサイドという立地とマッチしたエンターテイメントレストラン「TAVOLA TAVOLA by ZILLION」にて、阿部洋平料理長が披露。
旅と食をテーマとするプロジェクトを手掛けた経験のある、阿部シェフならではの感性が光る「青」の演出。オレンジベースのカクテル「青い輝き」からスタートし、イタリア料理必須素材のトマトも、優雅な甘さが注目の「OSMIC FIRST QUEEN」、そして更なるエンターテイメント「炎の演出」でもてなされるドルチェと共にゴールへと向かう中、どこかに必ず「青」との遭遇が待ち受ける。
ホテル(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)×観光局(イタリア政府観光局後援)、さらには地中海エリアのワインというマッチングに旅心を誘われ、新たに手にしたトラベルブックがある。
それは、今は亡き谷口ジロー先生とベネチアで取材をした、決して忘れることのない旅の思い出へとリンクする。
その取材の主たる目的でもあったのが、ルイ・ヴィトンが出版している「トラベルブック」シリーズだ。
世界各国のアーティストが描いたイラストを通じて旅を楽しむ当シリーズの最新作となるのは、まさに青。「地中海」!
フランス人アーティストでイラストレーターのオロール・ドゥ・ラ・モリヌリは、パリのエコール・スーペリユール・デ・ザール・アプリケ・デュプレでファッション・スタイリングを学ぶ傍ら、中国の山水画の画僧、石濤(1642年-1707年)の著作「苦瓜和尚画語録」との出会いをきっかけに、中国の書画への興味を抱き、今や墨と筆が彼女の発見の道具となっているのだそう。
よって、幾度となく世界各地の波の音を収録してきた経験のある筆者も、未だ見ぬ深海を思わせる「青」というよりも「藍」色の1冊の中に登場する、彼女独自のタッチで描かれた数々の生物が生息する地中海との出会いに心躍る。
「『Men in BLUE!?』へ捧ぐ」をテーマに旅した7月初旬の「CINEMATIC JOURNEY」。「青い旅」の寄り道を経て、到達したのは?
前述の谷口ジロー先生が、夢枕獏のベストセラー小説を漫画化した『神々の山嶺(いただき)』が、7年の歳月を費やし、フランスでアニメ化を実現。300を超える劇場で、13万人以上の動員を誇る大ヒットを記録したという本作が、遂に日本上陸!
フランス芸術文化勲章シュヴァリエ章ほか、数々の名誉ある受賞歴を誇る漫画家として知られ、繊細で緻密な作風には定評があり、バンド・テシネの影響が最も色濃いとも称される。
このほど2014年、本作製作開始時に行われた谷口先生の貴重なインタビュー映像入手のお知らせを宣伝担当者より受け、早速拝見する機会を得た。
「アニメ映画の完成を非常に楽しみにしていて、これまでに何度かスタッフのプロデューサーの方、監督にお会いしてこのアニメに対してのすごい熱意というか意気込みを感じていて本当に実現してほしいという気持ちでいっぱいです」
フランスへも二度赴き、アートビジュアルの方向性を決める会議に参加したり、監督にも積極的にアドバイスを与えていたという先生らしく、次第に固まっていくビジュアルにも満足な反応を見せていたとこぼれ聞く。
「かなり力を入れて描いた作品なので、映像となるのがすごく楽しみ。私にできることがあれば本当に参加したいという気持ちです…」
そんな思いを天空より、送り続けたに違いない本作。
孤高のクライマー羽生丈二VS彼を追うカメラマン深町誠。登山家マロリーのエベレスト登頂の真実を含め、男たちのドラマが結末へと向かう中、どこかしら「Men in BLUE!?」な登山ウエアがフィットしていた羽生&深町のように感じたのは筆者だけ?
『神々の山嶺』
7月8日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開。
© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中