ファッションlovesシネマ(宇佐美浩子)

2021/09/10 06:00 更新


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このところ日本のファッションブランドのコレクション・テーマやキーワードに、度々みかけることがあるのが「シネマ」。

たとえば「imagine fabrics」をコンセプトに掲げ、ブランド独自の「Descriptive Label/品質表示」を制作した衣服に取り付けることにより、着る人は作り手の思いを受け止め、と同時に日本の技術力の大切さを伝えている「CHONO」は、映像クリエイター蠣崎迅(かきざきじん)を監督に、この秋冬コレクションを発表した。

またパリデビューから30年目を迎え、デザイナー山地正倫周と山地りえこによる新たな「WOMEN’S COLLECTION」を発表した「RYNSHU」。そのファースト・コレクションとなる「2022 SS COLLECTION」でも、シネマのヒロインがイメージソースになっている。

そこで9月最初の「CINEMATIC JOURNEY」は、「ファッションlovesシネマ」をテーマに、いま注目の3作をフィーチャー!

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まずは現在公開中のギリシャ映画『テーラー 人生の仕立て屋』から。

ギリシャ最大の「テッサロニキ国際映画祭」で、ギリシャ国営放送協会賞、青年審査員賞、国際映画批評家連盟賞を獲得。またイタリアの「ベルガモ・フィルム・ミーティング」で最優秀監督賞と観客賞をW受賞するなど、世界の映画祭でも話題を集めたという、新鋭気鋭の女性監督ソニア・リザ・ケンターマンの長編デビュー作。

太陽が降り注ぐギリシャの首都、アテネを舞台に、老舗の仕立て屋が、移動式テーラーへと転身を遂げ、オーダーメイドのウェディングドレスと共に、人生をも仕立て直すヒューマンストーリー。


日々、スリー・ピース・スーツを身にまとい、完璧に理想のオーダーメイドスーツを仕立てる職人気質の主人公、ニコス。彼が新たに挑むこととなった、世界にひとつだけのドレスの数々は、鑑賞者たちにも幸せオーラをシェアしてくれる。

そのドレスのデザインすべてを担当したのが、ロマン・デュリス主演の『パパは奮闘中!』でも衣装デザインを担当したジュリー・ルブランによるもの。

ちなみに同作のプロモーションで来日したデュリスに本紙用インタビューを実現した際、

“衣装は演じる人物を物語る”

と答えた彼のコメントに共感したことを覚えている。


テーラー 人生の仕立て屋

全国公開中

© 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A.

「ファッションlovesシネマ」をテーマに、いま注目の3作をフィーチャーする今回の「CINEMATIC JOURNEY」。続いては、同じく現在公開中の『ミス・マルクス』。

Photo by Emanuela Scarpa

19世紀を代表する哲学者にして経済学者、カールマルクスを父に持つエリノア・マルクス。

16歳で父の秘書として、社会主義者の会合に参加するようになり、男女平等を唱えるなど、労働者や女性の権利の向上にも貢献。

さらに「ボヴァリー夫人」やヘンリック・イプセンの戯曲を最初に英訳するなど、文学作品や演劇作品の翻訳・上演にも注力するほか、俳優としても活躍する演劇人でもあった。

その一方で、社会主義者で劇作家のエドワード・エイヴリングに生涯をかけて捧げた愛の重さと反比例するかのような酷な現実。

そんな彼女の半生を、パンクロック・バンド「ダウンタウン・ボーイズ」の音楽と共に描いたのが本作。

Photo by Emanuela Scarpa

監督・脚本を手掛けたのは、イタリア・ローマ生まれのスザンナ・ニッキャレッリ。

本作で2020年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門でベストサウンドトラックSTARS賞を含む2冠に輝き、2021年ダヴィッド•ディ•ドナテッロ賞11部門ノミネート、衣装デザイン賞ほか3冠受賞に輝く。

というわけで、本作をより一層バリューアップした衣装デザインを担当したマッシモ・カンティーニ・パリーニ。彼はこれまでにも国内(=イタリア)外の名だたる作品の衣装デザインを手がけ、過去4回にわたり本作同様の受賞歴を誇る。


ミス・マルクス

シアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほか全国順次公開

配給:ミモザフィルムズ

©2020 Vivo film/Tarantula

「ファッションlovesシネマ」をテーマに、いま注目の3作をフィーチャーしている今回の「CINEMATIC JOURNEY」。ラストは『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

1941年の発表当時に2000回上演され、その後、映画化もされたことのある名作戯曲を、

霊媒師役のジュディ・デンチを筆頭に華やかなキャストと、30年代のブリティッシュ・レトロなファッションやインテリアを配して描いたラブシックストーリー。

その魅力のほどをコスチュームデザイナー、シャーロット・ウォルターの取り組みをここに少しばかりシェアしたく!

❝キャストに着せるため、1930年代の素材を調達❞

役者に着てもらう衣装の必須条件として、十分なコンディションで、しばらくの間着用できる当時の服であること。だがそれらをみつけるのは至難の業だった。

さらに衣装を作ることのできる当時の生地を探すのも、また当時の服を探すのもかなり難しく、それを探すために英国中を巡り、バーミンガムとウェールズで幾つか買付けたのだとか。

☑エルヴィラ役のレスリー・マンのためのカラーパレットを早い段階で決め、黒とクリーム色、そして赤を彼女の色にした。彼女は幽霊なので、先端的、なおかつ本作の他の人物とは全く対照的に見せたかったし、同時に異なるように見えなければならないから。

☑マダム・アルカティ役のジュディにはパフォーマンス用の衣装が必要だった。

旅慣れた女性を演出するため、インドの刺しゅうの入った生地やターバン、フェザーを使い、様々な要素を含んだ衣装を制作した。

☑ダン・スティーヴンスによって演じられるチャールズというキャラクターは、周囲の元気な女性たちと一緒にいる時は、より穏やかであろうと想定し、優しいトーンの色や、淡いピンク、ベージュを使用。

…などなど、と彼女のチャレンジのつづきは是非ともスクリーンで!

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

9月10日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

© BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020

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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中

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