芸人、オリエンタルラジオの中田敦彦氏が始めたファッションブランド「幸福洗脳」がネットを中心に話題だ。インパクトのある漢字ロゴ「幸福洗脳」を刺繍したTシャツをあえて1万円で売る。「タレントグッズやファンビジネスではなく、ブランドとして確立したい」との思いから立ち上げ、1カ月強で東京・乃木坂に路面店を開設した。3月には阪急メンズ東京で期間限定ショップも予定する。
(大竹清臣)
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同ブランドは昨年10月、ECサイトを立ち上げた。中田氏がパーソナリティーを務める3月末までの期間限定のラジオ番組(ニッポン放送)がスタートする数日前だった。番組内では、なぜアパレル事業を始めたか、どんなブランドにしたいか、今後のビジョンなどを熱く語る。「ビジネス上の試行錯誤や失敗も含め、ブランドが成長するプロセスをリスナーと共有できるのが強み」としている。
トレンドの変化が激しい女性向けファッションと違い、ターゲットにした大人の男性はこだわった趣味に金をかける傾向が強い。「〝ギトギトこてこてのラーメン〟にはまると抜け出せなくなるような、濃くクセの強い提案をし続けることがブランド価値向上につながる」と分析する。伝える手段もラジオの他には、女性への影響力が高いインスタグラムよりも、長文で主張できるブログを重視している。
中田氏は「ファッションも音楽も市場にあふれ、ネットで気軽に手に入る時代だからこそ、逆に個人事業でも、まだまだやれることはあるはず。正攻法で勝てなかったとしても」との思いが強い。これまでも、売れそうにないモノを売る挑戦として、ミュージシャンや漫画家、マイナースポーツのアスリート、シルバーアクセサリーの職人、個人営業のふとん店などと商品開発や宣伝で協業の輪を広げてきた。自己資金で刺繍専用ミシンを購入したり、路面店の内装や看板にも手をかけたりと本気度がうかがえる。
商品もTシャツやパーカなどカットソーアイテムだけでなく、革ジャン、シューズ、眼鏡などまで拡大する予定だ。オールドメディアと言われるラジオと、リアルな接点を大切にする路面店を武器に、〝消費者巻き込み型〟のブランディングでの実験は続く。今後はインバウンド(訪日外国人)需要の取り込みや海外進出(台湾を検討)なども計画。ラジオ番組が終わってもブランドビジネスは継続する。オンラインサロンをベースに新たなビジネスも考えている。