仏輸出産業に関税とユーロ高の重圧 米国価格3割増も

2025/08/14 06:25 更新NEW!


 【パリ=松井孝予通信員】米政権が欧州製品への15%関税を発動し、仏輸出産業に緊張が広がっている。ラグジュアリーや高級プレタポルテにとって基幹市場である米国での価格転嫁が課題となる中、年初からのユーロ高が加わり、収益構造への圧力が強まっている。

 「貿易収支は明確なアラートだ」。ロラン・サン=マルタン対外貿易担当副大臣は、上半期の貿易赤字拡大を受け、欧州企業の競争力強化と輸出市場の多角化を急ぐよう訴えた。

 仏ファッションアパレル産業連合のルルエ共同会長は「米国はラグジュアリーと高級プレタポルテにとって不可欠な市場。関税の長期化が産業全体の利益を圧迫するだろう」と言及した。24年は、婦人服の8%、バッグ製品と化粧品の各13%が米国へ輸出された。ベイン&カンパニーの予測では、25年の高級消費市場全体は2~5%の縮小が見込まれており、前年比約20%の売り上げ減に直面した中国市場の回復が遅れる中、米国市場への依存は一層高まっている。

 加えてユーロ高が、企業収益に直接的な影響を与えている。欧州中央銀行によればユーロは年初から対ドルで13%、対円で6%、対元でも同水準で上昇した。バークレイズの調査では欧州企業の59%が「為替が利益を直撃」と回答し、関税の影響(47%)を上回った。ワインやスポーツ用品など価格弾力性の高い分野では、関税と為替を合算して30%近い米国価格上昇に直結するケースもある。

 ラグジュアリーブランドも例外ではない。エルメスは25年上半期決算で、営業利益率は前年の42%から41.4%に低下した。

 為替ヘッジや価格戦略の見直しを含む中期的な対応が、今後の輸出戦略の鍵となる。ラグジュアリー製品でも、外部環境の変化に応じた柔軟性が求められている。



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