そろそろ年度末も近づき、春にはファッションビジネス(FB)業界への新しい仲間が入ってきます。最近の市場やトレンドのおさらいをかねて、毎日掲載している「FB用語解説」から特別版をお送りします。五輪イヤーにあやかり、初級・中級・上級のクラスわけには、アスリートたちの名言も拝借しました。FB業界用語の腕試しをお楽しみください。
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□FSC認証 森林環境の保全で注目
森林管理の認証を行う国際機関である森林管理協議会(FSC)が評価・認証する森林認証制度。適切な森林管理がされていると認証された森林から収穫された木材を原料にした木材製品や紙製品には、FSC認証マークが与えられる。消費者はこのマークがついた商品を購入したり使用することで、森林環境の保全など持続可能な社会実現に貢献することができる。サステイナビリティー(持続可能性)が世界的な潮流になるなかで、アパレル企業はFSC認証を取得した紙を使ったショッパーや包装用資材、下げ札などを使い始めている。
□アナトミカルラスト 解剖学的見地を取り入れた足型
解剖学的(アナトミカル)な見地を取り入れて製作された靴の足型(ラスト)のこと。足型計測などから元々のカーブや凹凸、かかとの丸みなど複雑な立体形状を再現したラストで、人間の足本来の形に近いため、これを元に設計された靴はフィット感やホールド性が高まる。足の自然な形状に合うため、コンフォート感も向上する。スポーツなどでは土踏まずを締めて足のぐらつきを防止するため、下半身の踏ん張りが利く効果もある。
□蛙張り 内側にも生地を張った傘
内側にも生地を張り、骨が見えないようにした傘で、日傘や晴雨兼用傘に使われる。内側から見るとカエルの水かきに見えることから、蛙(かわず)張りと呼ばれるようになった。生地を2枚使うことで遮光性、遮熱性が高まり、風雨にも強くなる機能がある。また、見た目が美しく、内側の生地に色、柄をプリントして傘を差す楽しみを加えるものも出ている。職人が手作業でつくるため、生産量は限られており、高級品とされる。
□BCBG パリ上流階級の着こなし
BCBG(ベーセーベージェー)は、ボンシック・ボンジャンルの略語。英語で言えばグッドスタイル、グッドクラスを意味する。パリの上流階級のライフスタイルやそのライフスタイルを背景にしたシックな着こなしのこと。フランス版プレッピーともいえるトラディショナルでコンサバティブなスタイルだ。19~20年秋冬の新しいトレンドとして浮上した。トラディショナルな英国調チェックのジャケットにボックスプリーツの膝下丈のスカート、キュロットやボウブラウスといったアイテムを組み合わせる。
□PI値 レジ客1000人当たりの購買指数
purchase indexの略で、読み方はピーアイ値。レジ客1000人当たりの購買指数を表す。よく利用されるのが、個別商品の販売数量に対するPI値だ。例えばAという商品の売れた数量を、レジ客数で割り、1000をかけることで、A商品に対する客の支持度が具体的に分かる。このように各商品の支持される状況を確かめることで、店頭での欠品による機会ロスを減らしたり、商品の発注精度も高めることができる。
□ティール 鴨の頭の青緑色
ティール(teal)は鴨(かも)の頭から首にかけてすっと入った青緑の部分の色のこと。ティールブルーまたはティールグリーンとすることもある。日本語では鴨の羽色と呼ぶ伝統色。レディスで色物の人気が続いており、寒色系ではブルーやグリーン、その中間のような色が様々なアイテムで登場している。特にデザイナーブランドなどで、色の取り上げ方にもトレンドやブランド独自の呼び方があり、例えばブルーならどんなブルーで何をイメージしているか、シーズンごとに違う。ティールはウェアだけでなくバッグなど雑貨でも多く見られる。
□スレン染料 高い耐光、湿潤堅牢度
バット染料(vat dye)、建染(たてぞめ)染料のことで、耐光、湿潤堅牢度が非常に高い染料。水に溶けない染料だが、アルカリ還元することで水溶性のロイコ体と呼ばれる化合物になりセルロース繊維に染着、その後酸化処理することで元の不溶性に戻る。主に高い染色耐久性が求められるユニフォームなどで用いられ、色落ちしにくいジーンズなどに使われることもある。中国の環境規制の問題から、現在品薄状態となっている。
□八刺し ラペルの生地と芯地を固定
スーツのラペルの裏側に入れられた、芯地と生地を縫い合わせるための縫い目のこと。「八」の字のように見えることから、この名がついた。毛芯を使い、八刺(はざ)ししたスーツの襟は丸みを帯びた形(ロール)を美しく保つことができる。湿気や長く着用することによって、芯地と生地が乖離(かいり)するのを防ぐ役割もある。毛芯を使用したものなど昔の洋服には八刺しの入ったものが多かったが、手縫い作業など手間がかかるため、現在は接着芯地の普及により、省略されている洋服が多い。
(繊研新聞本紙20年2月7日付)