そろそろ年度末も近づき、春にはファッションビジネス(FB)業界への新しい仲間が入ってきます。最近の市場やトレンドのおさらいをかねて、毎日掲載している「FB用語解説」から特別版をお送りします。五輪イヤーにあやかり、初級・中級・上級のクラスわけには、アスリートたちの名言も拝借しました。FB業界用語の腕試しをお楽しみください。
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□トリミングジャケット フレンチシックの流れで注目
trimming jacket。ジャケットのヘムラインやフロント合わせ、襟を縁取り(トリム)のように飾ったジャケットのこと。クラシックでコンサバティブなイメージを強調するジャケットの一つ。カラーやラペルのない襟なしのジャケットも丸襟からフロントに合わせ、ヘムにトリミングする。ポケットの縁もトリミングするデザインもある。ファンシーツイードを使ったタイプがクラシックの定番だが、膨れジャカードなどジャカードのバリエーションも目立つ。フレンチシックのトレンドを背景に、20年春夏デザイナーコレクションでも注目を集めた。
□インクジェットヘッド プリントに使われる精密部品
ink jet head。インクジェットプリンターに搭載され、インク粒を吐出する精密部品。人間の目に見えないほど細かいノズル(孔)が多数開けられ、ピコ(1兆分の1)リットルサイズのインクの液滴を対象物に飛ばして印刷する。電圧で変形する素子を使うピエゾ式、加熱でインク内にできる気泡の圧力を利用するサーマル式などがある。最近はアパレル向けにインクジェットプリンターが使われ、京セラ、リコー、セイコーエプソン、富士フイルム、コニカミノルタといった日本のメーカーのインクジェットヘッドが多く採用されている。
□618商戦 独身の日に次ぐECのビッグイベント
中国EC最大の商戦は最大手アリババが09年に始めた11月11日の「独身の日」。これに次ぐ規模は、第2位の京東が10年の設立記念日6月18日に始めた「618」商戦で、上期最大の商戦となっている。ここ数年は5月下旬からセールが始まり1カ月程度続く。期間中には父の日があるほか、今年は端午節の3連休もあり、商戦は大いに盛り上がりそう。この期間中は天猫や蘇寧などもイベントを行っている。18年の販売総額は2844億元(約4兆8400億円)だった。1位は京東の1592億元、2位はアリババグループだった。
□ヨーク 肩などの切り替え部分
yoke。肩や背中など、衣服の切り替え部分のこと。そこに当てた布を指すことも多い。丈夫さや着やすさ、装飾が目的。シャツやブラウス、ドレスの肩、胸、スカートやパンツの腰によく使われる。形は、メンズのドレスシャツの肩ヨークのような直線的なもののほか、ウェスタンシャツの胸や肩に多いアーチ状、スカラップ型など多種多様。肩ヨークから続いている袖を「ヨークスリーブ」という。ヨークはもともと、牛などの家畜に車を引かせる際の「くびき」を指し、転じて「絆、結びつき」の意味を重ねているという説もある。
□ドロップ寸 ウエストの絞り具合を表す
紳士服の胸囲と胴回りの寸法の差のこと。身長だけでなく、体形の違いによるサイズ設定も着心地やフィット感を左右するテーラードのスーツの上着やジャケットで用いられることが多い。バストサイズとウエストサイズの差寸で決められており、JIS(日本産業規格)では差寸20センチのJからJY、Y、YA、A、AB、B、BB、BE、Eと差寸が小さくなっていき、イタリア製のスーツなどの表記では3、4、5、6、7、8、9と数字が大きくなるごとに差寸が大きくなる。
□インクルーシブデザイン 多様な人を巻き込んで作り上げる
inclusive design。従来のデザインプロセスやターゲットから除外・軽視されていた高齢者や障害者、外国人など、多様な人々を巻き込み、意見を吸い上げて物やサービスを作り出すデザイン手法。こうした多様な人々をリードユーザーやエクストリームユーザーと呼ぶ。リードユーザーのアイデアや課題をデザインに取り入れることで、潜在的な課題を発見し、健常者も含めた誰もが使いやすいデザインを生み出すことを狙う。
□ボディス コルセット風の上半身部分
bodice。フランス語でbodics。もともとは15世紀ころから女性に使われ始めたとされる胴着、コルセットのこと。上半身にぴったりした下着を指し、ドレスの上半身部分の意味もある。アウターと下着の中間のような、部屋着としても使われたという。特徴は、胸や腰の膨らみ、ウエストのくびれを強調する形状。バストからウエストにかけて、ひもで締め付けて着るベストがわかりやすい。最近は、伸縮性の強い素材を使ったボディースーツのようなアイテムを指すこともある。
□フラッグチェック 自動車競技の旗が由来の格子柄
flag check。チェック柄の一種。2色使いの市松模様で、白黒のものを指すことが多い。チェッカーフラッグ、チェッカーボードなどと呼ばれることもある。自動車競技やモータースポーツで、コース上のドライバーにメッセージを伝えるために振られる旗に名前が由来している。ここ最近、パンチの利いたストリースタイルを演出するための一要素として、若年層の男女の間でフラッグチェックの服や雑貨の人気が高まりつつある。
(繊研新聞本紙20年2月7日付)