そろそろ年度末も近づき、春にはファッションビジネス(FB)業界への新しい仲間が入ってきます。最近の市場やトレンドのおさらいをかねて、毎日掲載している「FB用語解説」から特別版をお送りします。五輪イヤーにあやかり、初級・中級・上級のクラスわけには、アスリートたちの名言も拝借しました。FB業界用語の腕試しをお楽しみください。
□バロックパール 定形外の真珠

baroque pearl。ラウンド・パールと呼ばれる球形、セミラウンドのドロップ形、エッグ形、ボタン形以外の不定形の真珠を指す。語源は諸説あるが、ポルトガル語で「いびつな形」を意味する「barroco」(バロッコ)が有力。1531年には真珠にバロックと用いられた記録があり、16世紀末にイタリアで始まった美術・文化様式のバロックの由来とされる。真珠は真円に近い球形ほど高評価だが、バロックパールは二つと同形がなく個性が強いため、ファッションの多様化とともに評価が高まっている。
□セットアップ 共布の上下揃いの服
set-up。元々はスーツに使われていた言葉で、素材や色柄が同じジャケットとパンツを単品で販売する商品のこと。上半身と下半身それぞれのサイズに合ったジャケット、パンツが選べ、自分に合うサイズでスーツを着られる。仕事着だけでなく、近年はストレッチ素材の上着にイージーパンツなども増え、カジュアルシーンで着るセットアップがメンズ、ウィメンズともに増えている。20年春夏メンズコレクションでは、ショートパンツやハーフパンツと共地のトップを合わせたセットアップがトレンドとなった。
□マーチャンダイザー アパレル企業の花形職種
merchandiser。市場の動向やシーズントレンドなどをもとに売れ筋を予測し、数値責任を持って商品化計画を実行する専門職のこと。一般にMDと略される。調査で得た情報をベースに商品企画を立案し、見本を作り顧客に提案し、注文を受けて生産に入る。約束した期日までに商品を納入する。ファッション企業の生命線を握る花形職種といわれる。定量的な情報だけでなく、時代の空気といった目に見えないものをつかむ資質も必要となる。企画・生産側のアパレルマーチャンダイザーのほか、品揃え、販売側のリテイルマーチャンダイザーがある。
□ヘンリーネック 丸首をボタンで留めた形
Henley neck。丸首のデザインの一つ。首から胸元にかけて切り込みがある前開きで、3個くらいまでのボタンで留める形。元々、生地に伸縮性があまりない時代に着脱しやすくしたもの。名称は、英国のヘンリー・オン・テムズで19世紀から毎年開催されているボートレース「ヘンリーロイヤルレガッタ」で、選手が着ていたシャツに由来するという。19年春夏は、トレンドとしてヘンリーネックの商品が数多く販売され、ワッフル地などのカジュアルなプルオーバー、ワンピースによく見られた。
□サドルバッグ 自転車用で高機能
saddle bag。自転車のサドルに装着するかばん。競技用のロードバイクは荷物を搭載する想定ではないため、かごや荷台などを省いている。従来は最低限の備品を収納する小型が中心だったが、ツーリングなど長距離を走ったり、バイクパッキングをしたりと、サイクリング人気とともに大容量のバッグが必要となり開発された。雨など悪天候時にも対応し、防水性の優れた素材を使用したタイプもある。最近では着脱しやすく、自転車を降りてからリュックとして持ち運びできるタイプも人気だ。
□梳毛織物 スーツなどに使う上質な生地
梳毛糸(worsted yarn)を用いた織物。梳毛糸とは、羊毛などの毛繊維をよく梳(す)いて短い繊維長(約2.5センチ以下)のものを落とし、比較的長い繊維長のものだけを使った紡績糸。一般的に膨らみや柔らかさがある紡毛(woolen yarn)織物に対して、梳毛織物はスーツ地のようにサラッとした風合いで光沢感のあるものが多い。代表的な梳毛織物にはサージ、ギャバジン、トロピカル、ベネシャンなどがある。合繊織物でよく見られる梳毛調とは、これら梳毛織物の見た目、風合いに似せたもの。梳毛糸は織物用が多いが、ハイゲージのニットにも使われる。
□サブスクリプション 月額制などの定額利用
subscription。ユーザーが製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を払うビジネスモデルのこと。単語としてはもともと、雑誌などの定期購読の意味として知られていた。物を買い取らないので、利用者にとっては初期投資が少なく、コストの負担を抑えられる。所有することを好まない消費者にとっては魅力的。提供側のメリットは、ユーザーを一定の期間囲い込み、安定的に売り上げを作れること。服や眼鏡などのファッション分野のほか、音楽や飲食店、ホテルなどにも広がっている。
□ホットパンツ 短いボトムで体を強調
hot pants。70年代初頭、世界的にヒットした女性用のショートパンツのこと。極めて短いパンツで、ウエストから腰、足の付け根までぴったりフィットするシルエットが特徴だ。その後、80年代のボディコンブームでも流行した。19~20年秋冬コレクションで体のラインを強調する80年代調のスタイルが広がり、トレンドアイテムとして久々に浮上した。ふわっとしたブラウスに、ハイウエストをマークしたホットパンツ、足元はストッキングにサイハイブーツかパンプスを組み合わせるのがシーズントレンドとして広がった。
(繊研新聞本紙20年2月7日付)