「muneposiタオル」 言葉にしづらい悩みをそっと隠す《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》

2026/10/30 11:00 更新NEW!


使いやすさや透けにくさ、肌触り、デザインにこだわった

 入浴時に胸元を自然に隠したい。その思いに応える「muneposi(ムネポジ)タオル」は、共通の困りごとを抱えていた渡部和香子さんと三上美紀さんが手がけています。22年1月にクラウドファンディングで事業を開始し、これまでに6000枚以上を販売しました。

【関連記事】「SUUE SUUE」 生活の価値観から着想を得る《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》

ないから自分たちで

 三上さんは18年に乳がんに罹患(りかん)して胸に手術痕があり、渡部さんは胸のコンプレックスを抱え、2人とも他人との入浴に抵抗を感じていました。一般的なフェイスタオルは、胸を隠すには短く、濡れると体に張り付きます。手術痕を隠す入浴着は人の目を引き、三上さんは「服を着たまま湯船に入るなんて」と言われた経験もあるそう。欲しいタオルが見つからず、自分たちで作ろうと決意しました。

初心に帰る思いで11月30日まで再びクラウドファンディングに挑戦しています

 表はリップル生地、裏は柔らかいダブルガーゼ生地で、どちらも綿100%。肌触りと水切れの良さ、軽さにこだわりました。首にタオルをかけたまま洗髪できるよう、中央部分にメッシュ生地を配して長さ110センチで胸元を覆います。最初は家庭用ミシンでサンプルを作り、試作を自分たちで使用し、改善を重ねて完成させました。

湯船に浸かる時はタオルをターバンのように頭に巻きます

 販売当初は、気分が明るくなるよう、表地は明るい色柄で揃えたところ、「どうして派手なものしかないの?」と聞かれました。目立ちたくないニーズに応えて、無地や落ち着いた色柄も追加。大腸がんや帝王切開の傷跡などで下腹部を隠したいとの多くの声があり、長さ160センチサイズも開発しました。現在は、全国40店の雑貨店、自社EC、イベント出店、温浴施設や病院などが主販路です。

気分が明るくなる色柄から、落ち着いたトーンまで揃えています

顧客の声を力に

 23年から3年間入居た荒川区の起業支援施設「イデタチ東京」は、幅広い情報や人脈を得るきっかけになりました。同年の新聞掲載で大きな反響があり、24年に法人化。その6月には、「第1回リプロダクティブヘルスアワード2024」でシルバー賞を受賞し、認知も売上も高まりました。

 その矢先、ムネポジタオルの類似品の販売に直面しました。誤認して他社の類似品を購入した方から「裏地が付いていない」などの問い合わせがあったのです。実用新案は取得済みでしたが、専門家の力を借りて26年に特許権を取得しました。

 顧客の「このタオルがあったから、また温泉に行けました」といった喜びの声や応援の声が一番のやりがいだそう。

 思春期の子供たちや介護の現場など、当初想像していなかった用途にも使われ、「この商品に出会えてよかった」という声も届きます。

 「私たちは成長過程で、まだ軌道に乗っていません」と渡部さん。アパレルブランドとの協業や洋服店も含めた販路開拓、講演、交流の場づくりに意欲を高めています。「病気の有無にかかわらず、大人も子供も、胸元を隠すも隠さないも選べるように。ムネポジタオルが選択肢の一つになれたら」と語ります。

渡部和香子さん(左)と三上美紀さん(右)

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、新規事業開発の現場と経営に携わる。14年に独立しベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドを中心に、ブランディングと事業推進を軸とした支援を行い、デジタルやデザイン領域まで横断的に手がけている。



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事