米国のIT(情報技術)ベンチャー企業が開発した、ECサイト向けのウェブ接客サービス「Fanplayr」(ファンプレイヤー)が日本でも導入企業を増やしている。ファッションブランドではニューヨーカーで実績を上げ、ファッションサイト「cocacoca」も採用。大手の流通企業なども導入を検討している。
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ファンプレイヤーはECサイト訪問者の行動パターンを解析し、①購入意欲の強い人②迷っている人③カート落ちの人(パソコンのみ判別)④買わない人――などに分類。1カ月間程度データを蓄積し、②③には割引表示などのサービスを適切なタイミングで出す。
これにより、CVR(コンバージョンレート=購買率)を高め、売り上げアップにつなげる。サービス提供は対象者の80%で、提供しない20%との差を比較し、効果計測を続ける。広告のルート別の効果測定も可能で、効果的な広告で営業損益の改善にも役立つという。
これは英国の通信社ロイターが株式など金融商品の取引向けに開発したサービス。8年前にファンプレイヤーCEO(最高経営責任者)のサイモン・ヤンケン氏が、デレク・アデルマンCOO(最高執行責任者)らと独立して起業。日本ではジャム(JAMU、東京、上田英明社長)が日本法人として取り扱っている。
導入は欧米が先行しており、米国はファッションブランド「ゲス」やバッグ大手のEバッグ、英国のスポーツ・ダイレクト、イタリアの化粧品KIKOや「マセラティ」のライセンス商品を扱うサイト、アリタリア航空、ニュージーランドの百貨店ウエアハウスなどが採用している。
顧客のいい経験が目的 サイモン・ヤンケンCEOの話
欧米では伝統的な小売業の多くがECにうまく移行できていない。立地や生産・調達の仕組み、宣伝方法など今までの小売りの手法が役立たないからだ。ファンプレイヤーはオンラインの小売業と顧客とのいい経験や交流(エンゲージ)を作ることが目的だ。これができれば、CVRやリピート率もアップする。日本でもファッション企業に興味を持ってもらい、結果が出てきた。
ECでは、アマゾン・ドット・コムのようなピュアプレイヤー(インターネット専業の企業)が直接サービスを提供し、IT投資も規模が大きい。伝統的な小売業が勝負しても難しい。しかもピュアプレイヤーは購買のデータを活用している。ファンプレイヤーも同様に、オンラインのデータをリアルタイムに、そして顧客にとって意味のある経験として活用している。