デザイナーと美術館、モード展の背景

2015/05/14 10:15 更新


 仏国内の服飾施設で、「ランバン」「サンローラン」「ディオール」「バレンシアガ」の展覧会が開かれている。さらに仏国立美術館グランパレでの「ジャンポール・ゴルチエ展」が華やかさを添える。近年、パリだけでなく世界の都市でモード展が盛んに開かれるようになった。その背景には何があるのだろう。

(パリ=松井孝予通信員)

見学者の美に対するセンスが変化

 美術館が企画したモード展をさかのぼると、83年にニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)で、同館で初めて存命中の人物を取り上げた「イヴ・サンローラン展」が象徴的だ。当時、同展の成功はともかく、米プレスはこれを「爆発性イベント」と評したそうだ。それから27年後、パリ市立美術館プチパレで開催された同デザイナーの回顧展は、芸術的論点なく大成功を収め、この7月には英ボウズ博物館でのサンローランの企画展が待たれている。

 同じくMETで11年に来場者66万人を記録したアレキサンダー・マックィーン回顧展は、今年3月に英ビクトリア&アルバート博物館に場所を移し、周知の通り大ヒットしている。服飾関係の仏美術館ディレクター、エスクラルモンド・モンテイユ氏は、取材に対し、「衣装展は大衆受けする」とコメントした。

 一般大衆を引き付ける「モード展」を成功させるために、美術館には膨大な仕事が求められる。一方、展示されるデザイナー側について、パレガレリア(パリ市立モード美術館)のディレクター、オリヴィエ・サイヤール氏は、「20年前は大方のデザイナーが、回顧とモード、それぞれの概念の逆行を懸念していたが、今では誰もが美術館での展覧会を望んでいるのでは」と指摘。

 メゾンにとって展覧会は文化的なコミュニケーションを発揮し、美術館との協業グッズも売れる。見学者たちの美に対するセンス、趣味の変化が今日のモード展現象を導き、美術館とデザイナーの双方に利益をもたらしている。

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